もうすぐ年末年始。着物や初詣など、日本独自の文化や風習を感じる時期です。この機会に、落語や歌舞伎、能楽など日本が誇る伝統芸能に触れてみませんか。日頃は敷居が高く感じるものだからこそ、漫画で楽しんでみましょう。本物を鑑賞してみたくなるかも?

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ドラマも秀作!落語に魅せられた男たちの物語

「昭和元禄落語心中」雲田はるこ(講談社/全10巻)

前作「透明なゆりかご」など、真面目な作風が評判の「NHKドラマ10」枠。こちらは現在好評放映中のドラマの原作で、かつてアニメにもなった漫画です。

刑務所の慰問会で有楽亭八雲の落語にほれ込んだ与太郎は、出所後、八雲の寄席へ向かい、押しかけ弟子となります。

八雲の家には伝説の落語家有楽亭助六の一人娘で現在は八雲の養女の小夏も住んでいました。小夏は、父の死が八雲のせいだと思い込んでいるようでしたが…。

やがて物語はさかのぼって八雲と助六の出会いへ。落語界での2人の活躍、元芸者のみよ吉をめぐる複雑な関係などが描かれ、すべての謎が解けて現在につながり、未来へ。

八雲の「自分は落語と心中する」というほどのストイックな姿勢に、道を究める名人の凄味を感じます。作中に登場する数々の落語は、実際に聞いてみたくなること間違いなしです!

与太郎だからこそ言える、落語の魅力

どんなにマズくてもいまをキチッと生きてりゃあ
スッと笑って認めてくれる
落語の世界は駄目な奴にだってちゃんと優しいんだ

こんなママにおすすめ

  • 落語はよく知らないけど興味がある
  • 和服が好きで、特に男性の和装に色気を感じる
  • ドラマにハマッているので原作も読んでみたい

御曹司VS幼なじみ!歌舞伎界の華麗なる戦い

「ぴんとこな」嶋木あこ(小学館/全16巻)

歌舞伎の名門に生まれ育った御曹司・河村恭之助と、一般家庭に生まれ実力のみで歌舞伎界のトップを目指す澤山一弥。一弥の幼なじみで歌舞伎の道に進むきっかけとなった千葉あやめと偶然出会い、好きになってしまった恭之助は…。

恭之助と一弥の2人が、歌舞伎と恋のライバルとして切磋琢磨しながら成長していく物語です。

やる気がなくて家や父親から逃げていたお坊ちゃんの恭之助、真面目で理性的なのにツメが甘く自滅してしまう一弥。タイプは違えど共に未熟な2人が、大きな舞台を経験する度に、役者として、人間として成長するさまは、思わず応援したくなってしまいます。

歌舞伎が題材とはいえ、笑いあり涙ありで読みやすく、第57回小学館漫画賞を受賞。2013年にはドラマ化もされました。

大きな舞台の前に、父親が危篤だと知らされた恭之助の決意の言葉

俺は自分でもメンタル脆いこと わかってる
だから…もう これっきりだとしても…俺は会いに行かないって決めたんだ
親父への最後の舞台をちゃんと勤めるために

こんなママにおすすめ

  • 歌舞伎のきらびやかな世界を一度は見てみたい
  • ハラハラドキドキの三角関係の恋物語が大好きだ
  • ライバルがお互いに高め合うという設定に心ひかれる

所作も生き様も美しい!能楽師の日常

「花よりも花の如く」成田美名子(白泉社/既刊18巻連載中)

能楽師の青年・榊原憲人(のりと・あだ名はケント)を主役に、舞台のことはもちろん、稽古や遠征の様子など、日頃なじみのない能楽師の日常が丁寧に描かれた作品です。

芸能の家に生まれ、2歳から舞台に立っている憲人には当たり前のように身に付いている礼儀作法や所作の美しさなどは、現代の日本人がなかなか身に付けることのできないものであるだけに、つい憧れてしまいます(漫画なのに)。

憲人が見せる家族や恋人との関係、日常生活での困難への対応などに、考え方のまっすぐさ、潔さが感じられて、読後感がとても爽やかです。さらに、特筆すべきは絵柄の美しさ!衣装や舞台など、まるで本物のようで見ごたえがあります。

海外公演で憲人が感じること

『日本』というキーワードで再生される
恐怖や怒り 悲しみの中に 美しいことを加えられるなら 私は今日も ベスト以上をめざしましょう
人間を美しいと思うのは人間だけだ

こんなママにおすすめ

  • 「CIPHER」など成田美名子先生の作品が好きだった
  • 能を自分や子どもの習い事に考えたことがある
  • 細かいところまで描き込まれたマニアックな漫画が好き

この記事を書いたライター

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ふみきさん

福岡出身、大阪在住のまあまあフリーなライターです。夫と娘2人の4人暮らし。趣味は本屋巡り&図書館通い。忙しいママにおすすめの本や漫画をご紹介します♪

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