「にんげんじゃなくても、おしゃれになれるのかなぁ?」おしゃれをしたい妖怪たちと、それに応える女の子・メルル。あなたもきっと、忘れかけていた「なにかを好きな気持ち」に気付かされる。キャラクター絵本出版大賞みみつぐみさんの絵本を紹介します。

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大賞受賞作品が待望のデビュー!

『メルルとようかいのおしゃれやさん』 CHICORA BOOKS(ちこらブックス)ぶん・え みみつぐみ/1620円(税込)

CHICORA BOOKS(ちこらブックス)が主催する、キャラクター絵本出版大賞。その2018年大賞受賞作品『メルルとようかいのおしゃれやさん』が、7月30日に発売されました。

Amazonでは一時完売となるほど反響のある作品だそう!縁あってこの絵本を手にしたわたし。表紙には、“おしゃれやさん”という文字からは想像のつかないカラーと妖怪たちの妖艶な表情。

なんだかこれから見たことのない世界が広がりそう !?ワクワクする気持ちを抑えつつ、さっそく3歳の息子と一緒に読んでみました♪

子どもの反応は?

『メルルとようかいのおしゃれやさん』(表紙)妖怪たちに囲まれて、なんだかメルルも不安そう

まず印象的なのはその表紙。紫をベースに、独特のタッチで描かれた妖怪たち。息子にこの絵本を持っていったら「なにこれ?おばけ?おばけの絵本なの?」と身構えている様子。

「違うよ、妖怪だよ」そうわたしが答えると、「ようかい?」と首をかしげて、一瞬会話に間が空きました。聞きなじみのない言葉が、なんだそれは!という興味に変わったようで、「早く読もうよ!」と、いつになく前のめりな姿勢で、息子自ら絵本を開いていました。

カッパも水着を着せてもらって大喜び!

中は一変、淡い色使いに優しい表情の登場人物たち。主人公・メルルは、愛らしいそばかすの顔にふわふわの髪の毛と洋服。どこか懐かしいお人形さんのような容姿は“80年代のカワイイ”にあふれていて、親子ともに早くも魅了されてしまいました。

話もテンポのよい文章で、息子も真剣に聞いていたため、途中で下の子がちょっかいをかけにきても、「やめてよ、いま読んでるの」と、続きが気になって仕方ない様子。

妖怪たちの大行列!キミのお気に入りはどの妖怪?

妖怪がたくさん出てくるシーンでは、「これなに?これは??」「これかわいい!」と、指を指しながら大興奮!

今まで“妖怪”というものに触れたことがなかった分、新しい発見の連続だったみたいで「これはなんだろう?知りたい!」という気持ちが爆発しているように見えました。

しかしながら、さほど妖怪に詳しくない母。これを機に、図書館などで一緒に調べてみるのもいいかもしれませんね!ここから新しい楽しみがどんどん広がりそうな予感です♪

絵本から学ぶこと

親としては、この絵本を読むことで、ある日突然妖怪と出会ったメルルがすぐに打ち解けて、相手の悩みを真剣に受け止めてあげる純真さや、妖怪たちがメルルを思いやる温かい気持ちなどが子どもたちに伝わってくれるのではないかという期待を感じました!

一方で、「好きなことに一生懸命」で「嫌なことには嫌と言える」素直なメルルの姿を追う中で、「果たして自分はいま、その心をどれだけ覚えているのだろうか」という哀愁にも似た気持ちも…。

自分でも不思議で、とても印象的なことでしたが、これは大人ならではの視点なのかもしれません。だからこそ、ぜひパパ・ママには自分ひとりで一度ゆっくり読んでもらいたいと思う作品でした。

作者みみつぐみさんの思い

この作品で絵本作家デビューを果たした、作者の“みみつぐみ”さんは、民話のふるさととして知られる岩手県遠野市の生まれ。

幼少期から親しんでいた妖怪の民話を題材に、今回の絵本を制作されたとのことです。メルルが出会ったカッパが赤い顔で描かれているのも、あの有名な遠野物語に習ってのことだそうです。

さらに、作中に出てくる神社も「伊豆神社」という遠野市に実在する場所を舞台にされたとのこと。まさに、多感な少女期に吸収したエネルギーが、この絵本にすべて注がれているといった印象です。

2つの夢をかなえた作品

作者が本格的に絵本作家を目指したのは第一子出産後だったといいます。子どもにこれからどう育ってほしいのか?を考えたとき、ふと「まず自分は、なりたかった大人になっているの?」と疑問がわいたそうです。

そこから、夫の助けも借りつつ絵本の学校へ通い、4年かけてデビューまでこぎつけた、と本人は語ります。学生時代になりたかった大人。やりたかったこと。昔から好きだった「」と「ファッション」をつなぎ合わせたもの。それが今回の「メルルとようかいのおしゃれやさん」だったそうです。

くしくもわたしが感じた哀愁は、作者の感じた疑問とリンクしていたのでは…。と思うと、さらに感慨深いものがありました。

絵本に込められたメッセージ

世間の大人からすると、メルルはちょっと不思議な女の子に見えるかもしれません。ひとり遊びが好きで、薄暗い神社でいつも遊んでいて、急に現れた妖怪になんの躊躇(ちゅうしょ)もなく自分の服を着せてしまう。

だけれど、ここにも「子どもの好きを邪魔しない」という作者の思いが。それは、かつて子どもだったわたしたちにもつながること。

大人になるにつれて常識に囚われがちになり、自分が本当に好きなことより、いましなければならない事を優先してしまうクセがついてはいませんか。

子育て中なんて、特にそうですよね。やらなければいけない事すら終わらない!なんて日もしょっちゅう。次第に自分の時間も自分の夢も、気づかないふりをして心の奥にしまいこんでしまった人は多いはず。

お父さんやお母さんが、自分の好きなことをしてもいい。(それが例え変わった趣味でもね)

それを見て子どもものびのびと成長するはず。」と、作者は付け加えて語ります。

子どもの好き」という気持ちを伸ばしてあげるとともに、「自分たちの好き」を思い出させる、そんなあたらしい絵本『メルルとようかいのおしゃれやさん』。

毎日忙しいパパ・ママこそ、ぜひ手にとってその世界に入り込んでみてほしいと思います。少しでも多くの人に、メルルたちとの出会いがありますように♪

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2019年10月8日(火)まで

この記事を書いたライター

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わたなべさとみさん

2児の母であり、転勤族のヨメ。息子は1歳にして立派な子鉄(鉄道好きの子ども)となり、一緒に各地へお出かけしています。 日課は育児マンガを読むこと。

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