「おむつかぶれ」は必ずと言っていいほど直面する赤ちゃんの肌トラブル。おむつかぶれで真っ赤になったおしりを見るのは心が痛いですよね。おむつかぶれの症状と予防について、東京医療保健大学の米山先生にお話を聞きました。

お話を聞いたのは

米山 万里枝先生東京医療保健大学 教授

大学・大学院での研究や学生教育とともに、日本における児童虐待の増加や妊産婦の自殺を防ぐ活動を行っている。2018年には、品川区との連携による 「品川区産後ケア事業」 の一環で、「産後ケア研究センター」を設置。産後の母子支援に取り組んでいる。

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おむつかぶれの症状

おむつかぶれ(オムツ皮膚炎) 英名:diaper dermatitis
おむつかぶれは、おむつが当たっている部分が炎症を起こす皮膚炎のことをいいます。赤い湿疹(しっしん)ができ、炎症が強くなると赤くただれた感じになり、おしりや肛門周囲、股の内側などに炎症がみられます。オムツ皮膚炎とも言われています。

乳幼児は皮膚(角質層)が薄く、バリア機能が未熟で刺激に弱いです。特におむつをしている部分は、汗や尿による湿度で皮膚がムレた状態である上に、おむつによる擦れや拭くという刺激も加味して炎症を起こしやすいです。

これっておむつかぶれ?

おむつかぶれのサインは、おしりに赤い湿疹ができている、ただれができている、入浴時やおしりをふくときに痛がる、泣くといったものが注意サインです。また、おむつかぶれとは別に湿気の多い環境はカビが大好きな環境であり、カンジダというカビがいることもあります。

おむつかぶれの原因

おむつかぶれの原因として考えられるのは、尿・便、汗、皮脂、常在菌など、カビ、おむつによる摩擦、おむつの素材が合わない等があります。

尿は体に不要な老廃物を尿として排出するものですが、尿が肌に長時間付着した状態になると肌への負担となります。さらに、おむつ内の蒸れや尿の含有物と水分は常在菌が増殖する原因になります。

便は水分・腸内細菌などが含まれており、肌に触れたままの状態では肌への負担となり、下痢の場合は特に肌への負担が大きくなる場合があります。

そして乳幼児は汗孔(かんこう…汗の出口)の数が大人と同じだけあり、密集しているため汗をかきやすいです。体温調節のほとんどを汗をかくことで行い、おむつの部分も汗でいっぱいになるため放置すると汗疹やかぶれにつながります。また、おむつ部分のムレや菌繁殖の原因にもつながります。

布おむつが主流であった頃に比べて、最近は吸水性のいい紙おむつが増え、おむつかぶれの程度は軽くなり、頻度も減ってきています。しかしながら、乳幼児の肌はとてもデリケートなのでおむつかぶれはなくなっていないのが現状です。

どのくらいで治る?

スキンケアなどでよくなれば、薬を使う必要はないですが、おむつをしている限り、おむつかぶれはよくなったり悪くなったりするものです。少し赤い程度なら、すぐに改善すしますが、赤い部分が広がってきたり、ただれたような感じになってしまうと、治療が必要になり、長期化することもあります。

男の子と女の子ではどちらがなりやすい?

性器の違いにより、拭き方などが異なるため、拭き方や尿や便などの残差物が影響して、男女差がみられることもあります。ただ、強く拭かない、残差物を残さないなどの工夫により、特に大きな差がみられるものではありません。

病院にかかるタイミングは

軽度のうちは清潔を保って

まずは排泄後、速やかにおむつを交換するようにしてください。また、サイズの合ったおむつを使用するようにしましょう。おむつ交換や入浴の際には、ゴシゴシこするように拭いたり洗ったりせず、ぬるま湯を含ませたやわらかい布やおしりふきシートで押さえるように拭いたり、よく泡立てた石鹸(せっけん)でやさしく洗い、ぬるま湯でしっかり洗い流すなど皮膚を清潔に保つこと、拭き方や洗い方を見直すだけで改善することもあります。

紙おむつの種類を変えてみる

オムツ皮膚炎ではなく、紙おむつに対する接触性皮膚炎ということもあります。使用している紙おむつ自体がかぶれの原因になっていることもあるため、他の製品に変更することで改善する場合もあります。これに加え、ワセリンなどの保湿剤による皮膚の保護、炎症を抑える外用薬の適切な使用で改善が期待できる場合もあります。

小児科と皮膚科どちらにかかる?

小児科のかかりつけ医として身近で気軽にいける小児科があるのであれば小児科でみてもらうこともできると思いますが、症状が重篤な場合は皮膚科で相談することをおすすめします。

おむつかぶれで処方される薬

おむつかぶれの治療法はステロイド外用薬保湿薬が中心です。おむつかぶれは皮膚炎の一種で、炎症が起こると少し治っても、便や尿で悪化を繰り返すことがあります。このような場合は炎症を抑えることが重要で、炎症を抑える外用薬と予防策と併せて治療されます。

外用薬は、軟膏(なんこう)・クリーム・液体がありますが、できるだけ皮膚の刺激の少ない軟膏が処方されることが多いと思います。これらの薬でも治癒しない場合は、抗炎症作用があるステロイド剤が処方されることもあります。

おむつかぶれに対する外用薬と保湿薬

  • ステロイド外用薬(エキザルベなど)
  • 非ステロイド外用薬(コンベック、ベシカムなど)
  • 保湿薬(アズノールなど)

ステロイド外用薬を使用すると、2~3日でよくなるため長期的に使用を必要としませんが、予防策もしておかないと湿疹が悪化することがあります。悪化した場合の短期的使用は、副作用の心配はほとんどありません。

おむつかぶれの予防・対策

定期的なおしりとおむつのケアを

予防法としては、布おむつではなく、吸水性のよい紙おむつを使うこと。そして頻回におむつをチェックし、便や尿をしていたら替える、お尻を洗う、尿や便がついていたら拭くことです。

下痢をしているときは、特に頻回におむつを替え、お尻を洗いましょう。1日1回は石鹸でお尻も洗うといいです。皮膚炎になってしまっている部分は強くこすらないようにしてください。

※おむつかぶれの予防には、皮膚を清潔にすることが何よりも大切です。予防でよくなれば、薬を使う必要はありませんが、おむつをしている限り、よくなったり悪くなったりを繰り返します。少し赤い程度なら、上記の予防法で改善すると思いますが、赤い部分が広がると治療が必要になることが多いので、受診するようにしてください

おむつかぶれの予防にはワセリンがいい?

おむつかぶれのケアにワセリンを使っている人は多いですよね。ワセリンとは、石油を精製したミネラルオイル(鉱物油)を指します。ワセリンは、ローションやクリーム等の保湿剤と異なり、内部に浸透せずに皮膚表面に留まり、皮膚表面に皮脂膜を作り覆うことで、水分の蒸発を防ぎ、おむつかぶれの外的刺激から肌を保護するというものです。このワセリンの働きがおむつかぶれの予防や改善に効果があるといわれています。

純度の高い白色ワセリンを

ワセリンの原料が石油と聞くと、安全性が心配になる人もいると思います。ワセリンの中でも、精度が低いものは不純物が含まれていたり、酸化防腐剤が入っていたりすると肌に合わずに炎症を起こす可能性があります。一方、白色ワセリンは、純度が高く不純物を取り除いているため、おむつかぶれにも安心して使うことができます。ベビー用として売られているワセリンもあるので、そちらを選ぶようにするといいと思います。

ワセリンの正しい塗り方

  1. おしりを清潔に洗います。うんちやおしっこで汚れた肌にワセリンを塗ると、かえって症状が悪化し、肌荒れを引き起こします。おむつかぶれが起こっているときは、おしりふきの刺激で悪化することがあるため、おむつ替えのときにもく浴やシャワーのぬるま湯で洗い流すようにしましょう
  2. おしりをきれいにしたら、やわらかいタオルや乾いたベビーコットンでやさしく水分を拭き取ります。暖かく時間に余裕がある日は、おむつを外して乾燥させると治りが早いです
  3. ワセリンを患部に薄く塗ります。厚く塗るとワセリンの熱がこもって逆効果になります

ただしワセリンはおむつかぶれの薬ではない

ワセリンは抗炎症作用もなく、薬としての効能はない保湿剤です。軽度のおむつかぶれであれば効果がありますが、重症なおむつかぶれを治すことはできません。悪化しているおむつかぶれは、ワセリンを塗り続けるよりも、病院で適切な薬を処方してもらう方が早期治療できます。

おむつかぶれとよく似た症状の皮膚カンジダ症

おむつ自体にかぶれることもありますが、尿や便、汗などが原因になって皮膚炎が起き、皮膚についているカビが蒸れた状態で繁殖した場合は、皮膚炎が悪化することもあります。カンジダというカビ(真菌)による皮膚炎は、おむつかぶれと治療方法が異なるため、おむつかぶれとは呼ばず、「乳児寄生菌性紅斑」と呼ばれ、受診が必要となります。これもワセリンでは治療できないため、皮膚カンジダ症が疑われる場合は、早めに病院を受診するようにしてください。

カビに対する外用薬と内服薬

悪化する場合は、カンジダというカビによるおむつかぶれ(乳児寄生菌性紅斑)の可能性が高いため、カビに対する抗真菌薬外用薬(ラシミール、ニゾラール、ペキロンなど)が処方されます。

おむつかぶれと併発する可能性も

カンジダは原因がカンジダだけということは少なく、オムツ皮膚炎と皮膚カンジダ症が合併していることが多いです。その場合は両方を治療することが大切になります。