いまやほとんどの子どもが通っている「習い事」。子どもが自ら学ぶ姿勢をつけるためにはどんな習い事を選んだら良いのか、モンテッソーリ教師がヒントをお伝えします。

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「習い事はいつごろから?」「どのような習い事がいいでしょうか?」

幼児期に適切な教育を受けた子どもは、物事をやり抜く力、集中力、コミュケーション力といった非認知能力が向上、持続することが科学的にわかっています。幼児期の環境や学びがその後の人生に最も影響を及ぼすことから、早いうちから習いごとを始める家庭も多いようです。

私も保護者の方から「習い事はいつから始めるのが良いですか?」「どんな習い事がいいでしょう?」とよく質問されます。私自身は幼児にはたくさんの習い事は必要ないと思っていますが、保護者の立場から見れば、小学校に上がる前に何かやっておかないと学校の勉強についていけないかも…という不安やプレッシャーから、習い事をさせないことに対する罪悪感もあるようにも思います。現代は良くも悪くも情報過多ですし、引き算の子育てがしにくい状況ですね。

そこで今回は子どもにとって良い教育とは何なのかをおさえたうえで、習い事について考えてみたいと思います。

子どもの自主性を育てる習い事とは?

まず、皆さんにとって習い事をさせる目的とは何でしょう。英語を覚えたり、計算ができるようになったり、スポーツに親しんだり、あるいは受験のためでしょうか。どれもできるようになっておけば、子どもにとって良いことのように思えます。

しかし、もっと長い目で見ればどうでしょうか。子どもが自発的に学ぶ姿勢を身につけられれば、子どもにとってもっと良いことだと思います。大人が子どもの学びをずっと心配しつづける必要もなくなります。子どもには本来自ら学ぶ能力がありますから、それを信じて伸ばしてあげたいですよね。

幼児といえば五感に代表される感覚や、基本的な運動機能が育つ時期です。土に例えれば、よく耕して作物を育てるのに適した土壌を作っている段階と言えます。

まだ準備ができていない土地に焦っていきなりたくさんの作物を植えるよりは、最初にしっかりとした土台を作ったほうがのちのち作物がよく育つことでしょう。習い事もこれと同じで、早く始めるほうが良いとは限りません。

幼児期には日常のあらゆるものを五感を使って捉えることによって学びます。そのためには物を見たり、触ったり、匂いを嗅いだり、味わることなどを自分で、自発的に感じることが重要です。体験の中で自分自身で「面白いもの」「不思議なもの」を発見すると、それは強い印象として子どもの中に残ります。子どもは好奇心や探究心を刺激されて、「もっと、もっと!」と夢中になります。

公園で虫取りに夢中になっている子どもは時間も忘れて動き回り、まるで疲れることを知りません。大人が驚くくらいの記憶力で、難しい昆虫の名前をいくつも覚えます。そういった子どもの自発的な行動が、本来の学びの源泉です。

大人が一緒になって虫取りを楽しんだり、子どもの疑問や興味に応じて一緒に調べたりすればさらに興味が継続し、いつの間にかそれが子どもの学びの基本スタイルになるはずです。

自分から積極的に学びたいと思えるもの

習い事も同じ見方をしてみるといいと思います。子どもが好きなものであって、自分から積極的に学びたいと思えるもので、それにうまく伴走してくれる先生がいることが良い習い事の条件になるでしょう。子どもに何かを教え込もうとしたり、決まった型にはめようとするのではなく、子どもの興味をうまく捉えて、伸ばそうとしてくれる先生なら最高だと思います。

また、幼児のうちには手を使って何かを作る経験をたくさんして欲しいと思います。自分の中に湧いたイメージを形にする絵や、工作もいいと思います。

例えば昆虫が好きな子なら、誘いかければ虫の絵を描いたり、折り紙を折ったり、あるいは段ボールでカブトムシのおもちゃを作るでしょう。自分の発想を形にすることで、子どもは表現することの楽しみを知ります。ハサミで切ったり、ノリを貼ったり…手を使って得た楽しさの記憶は日を置いても継続します

子どもの自主的な活動はさらに広がり、一度作ったものをさらに発展させます。もしかしたら、イメージ通りにうまく作れないことにがっかりするかもしれませんが、一度楽しさを覚えると次はもっとうまく作ろうと試行錯誤できます。

反対に、昆虫が好きな子どもにといきなり虫のおもちゃを与えるのは控えたほうがいいと思います。おもちゃがあれば子どもは喜ぶかもしれませんが、興味が一気に受動的になってしまいます。「自分がイメージした昆虫」はどこかへ消え去り、目の前のおもちゃで遊ぶことに興味が限定されてしまいます。

こうなってはもうイメージの広がりはありません。完成度の高いミニチュアの前に、もはや自分で作る必要はなくなってしまいます。

子どもが自らの想像力を発揮するには、私は少々「足らない」状態がちょうどいいと思っています。なければないなりに、子どもは想像力を働かせてありものを何かに見立てたり、段ボールや画用紙を使って作ろうとします。「想像して、工夫して楽しむ」という行動が子どもの能力を伸ばすのです。

「子どもの活動が能動的なものであるか」という視点は、習い事を選ぶ際にも役に立つと思います。工作以外でも、子どもが自分なりに考えて動くスポーツもいいのかもしれません。

人は何かを提供されることばかりに慣れてしまうと、楽しみを自分で探すことが苦手になってしまいます。ましてや、好きではないものを無理に続けてもあまり効果を期待できません。

だからこそ、習い事をするなら「親がやってほしいこと」よりも「子ども自らが楽しめるもの」を優先して選んでみてください。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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