/ 2021.12.02

子どもが嘔吐(おうと)してしまう原因はさまざまです。お子さんの様子をしっかりみてあげましょう。また嘔吐した際はどのような応急手当が必要になるでしょうか。万が一のときに知っておきたい対処法を動画で解説します。

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動画で解説【子どもが嘔吐したときの応急手当方法】

教えてくれたのは

横田俊一郎先生

横田小児科医院院長。78年東京大学医学部を卒業し、東大病院小児科へ入局。その後、大学病院、関連病院で小児科診療に従事。血液・悪性腫瘍グループに属する。88-93年は社会保険中央総合病院(現「東京山手メディカルセンター」)小児科部長。93年に父の後を継いで小田原市北ノ窪にて開業。97年より現在のクリニックを新築。
社会保険中央総合病院小児科に就職し、日本外来小児科学会の設立に関わってからは、外来診療を中心に、ありふれた病気、健康増進のための医学、子育て支援をテーマに勉強を続けている。
▶横田小児科医院HP

なぜ子どもは嘔吐しやすいの?

大人は、食べたものが食道から胃にはいる際、弁のような作用が働き、胃から食道に食べ物が戻りにくい構造になっています。

生後半年未満の乳児は、そうした体の構造が未発達で胃の形もトックリのような形をしているため、食べたものが戻りやすく、お腹いっぱいに飲みすぎたときや、飲んですぐ横にしたりすると吐いてしまうことが多いのです。

指を口の奥に入れるとえずいてしまう「咽頭反射(いんとうはんしゃ)」が出やすいのも、体の構造が未発達である子どもの特徴の一つです。そのせいで大泣きして嘔吐したり、内科の診察で嘔吐してしまうことがありますが、大きな心配はいりません。

嘔吐が起きる原因は?

ウイルス性胃腸炎


嘔吐した際、ウィルス性の胃腸炎を疑うことが多いですよね。まず周りで胃腸炎になった人がいるかどうか、通っている園や学校で、胃腸炎が流行していないかなどを確認しましょう。周りにそのような人がいなければ別の原因かもしれません。

頭を打ったとき


頭を打ったあとに、脳に異常がおきて吐いてしまう、脳腫瘍などが原因で吐くということも稀にあります。嘔吐が長く続いたり、治ったと思っても繰りかえす、体重が減っていくようなら病院へ行きましょう。

アセトン血性嘔吐症

アセトン血性嘔吐症(あせとんけっせいおうとしょう)という病気があります。昔は自家中毒とも呼ばれていました。人間は、食事を採らないことで低血糖になったとき、体に蓄えた脂肪を分解しエネルギーに変えて生きようとします。その過程でできる「アセトン」という物質が原因で吐くことがあるのです。

よくある例として、子どもが遊び疲れて夕飯を摂らずに朝まで寝てしまったようなとき、翌朝起きると顔色が悪く、吐いてしまった、ということがあります。3歳~6歳くらいまでの幼児に多い症状です。

病院へ行き、点滴を打つと元気になることが多いですが、ものが食べられるようであれば、麦茶に砂糖を入れたものや、ジュースなど、甘いものを飲ませて様子を見ましょう。

お腹をひどくいたがるとき


お腹をひどく痛がって吐いてしまうようなときは、腸重積(ちょうじゅううせき)、腸閉塞(ちょうへいそく)などの病気の可能性もありますので、すぐに病院へいきましょう。

嘔吐をしたときの応急対応

横になっていて嘔吐した場合は、吐いたものが喉につまらないよう、顔を横に向けましょう。落ち着いたら、吐物で汚れた体や衣類を清潔にします。

水分補給について

吐き気が強いときに無理に水分を飲ませようとすると、また吐いてしまう可能性があります。無理に与えないようにしましょう。1~2時間水分を摂らなくても脱水になることはありません。

吐き気が治まってきたら少しづつ水分を与えます。まずはスプーン1杯の水分を与え、5分待ちます。吐かないようであれば、さらにスプーン2杯の水分を与え、5分待ち様子を見ます。そうやって徐々に水分量を増やしていきましょう。吐いてしまうようであれば、時間をおいて、再度スプーン1杯の水分からスタートさせましょう。

水分を摂らないと脱水が心配になりますが、脱水かどうかを判断するための1番の目安は体重です。普段の体重から5%未満の減少であれば、軽度の脱水、5%から10%であれば中等度の脱水、10%以上の減少であれば重度の脱水と判断します。

10キロのお子さんの場合は9キロまで減少すると重度の脱水ということになります。お子さんの普段の体重を把握しておきましょう。

食べ物について


嘔吐をしたあとの食事は、うどん、おかゆ、柔らかいパンなどの炭水化物から始めるのがよいでしょう。ゼリーなどでもOKです。

吐き気止めは使う?

胃腸炎などからくる吐き気は、長くても12時間ほどで落ち着くと言われています。無理に吐き気止めの薬は使わなくてもよいでしょう。

家庭内感染を防ぐために

ウイルス性胃腸炎を疑う際、気を付けたいのが「家庭内感染」です。おうちの方やきょうだいに感染してしまわないよう、できる限りの対処をしましょう。

嘔吐物処理セット

  • 500mlペットボトル
  • 漂白剤
  • エプロン・手袋・マスク
  • ビニール袋2枚
  • 雑巾
  • ペーパータオル

嘔吐物の処理方法

  1. 500mlのペットボトルに対しキャップ2杯分の漂白剤原液を混ぜ、0.1%の次亜塩素酸ナトリウム液を作ります
  2. 使い捨てのエプロン・マスクと手袋を着用して作業しましょう
  3. 吐物をペーパータオルなどで静かに拭き取り、ビニール袋に入れ、先ほど作った消毒液をかけてから袋の口を絞ります。このとき、袋の空気を抜かないように注意しましょう
    塩素系漂白剤の使用にあたっては「使用上の注意」を確認してください
  4. 拭き取った後は、作った消毒液で汚染場所を10分ほど浸し、その後拭き取り、最後に水拭きします。使用したエプロンやマスク、手袋もビニール袋に入れて、先ほどの袋と一緒に二重にして廃棄処分します
  5. 吐物を処理した後は室内の喚起を十分に行いましょう

手洗いはしっかりと

手袋をして直接触れないようにしていても、吐物を処理したあとには必ず手を洗いましょう。また嘔吐をした人とはタオルを分けて、常に清潔なものを使用しましょう。

汚れた衣類の洗濯

吐物で汚れた衣類は、他の衣類とは分けて洗います。衣類の洗濯は、85℃以上の熱湯に1分以上浸すか、0.02%の次亜塩素酸ナトリウムに30分~60分漬け置き消毒をするのが有効です。

洗濯するのが難しい布団やカーペット、ソファなどは、吐物の処理後、スチームアイロンを使って加熱による消毒を行います。1カ所あたり2分ほどあてると効果的です。

子どもの「もしも」のときために

嘔吐にはいろいろな原因がありますが一番身近なのはウィルス性胃腸炎によるもの。家族の健康を守るためにも嘔吐物処理セットを常備しておくと安心ですね。

監修:横田俊一郎(小児科)
制作:株式会社こどもりびんぐ/株式会社照林社/株式会社エイトリンクス
ナレーション:神路めぐみ(株式会社ヴイ・フォーク)