モンテッソーリやレッジョ・エミリア、イエナプランなど、最近はオルタナティブ教育と呼ばれる「個を伸ばす」「自主性を育てる」教育が注目されています。でも実際はどんなところなの?そこで、モンテッソーリスクールの特徴をまとめてみました。

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モンテッソーリの「お仕事」

モンテッソーリの教室には、子どもの発達段階にあった様々な活動が用意されています。2歳児向けであれば大きめのビーズを紐に通す教具、大きめの豆をサジですくう教具、ハサミやのり、洗濯バサミといった道具など指先を使う小さな教具、それからつみきのように体全体を使う大きな教具があり、それらの中から子どもが自分で選んで取り組みます。

ピッチャーからピッチャーへ豆を移す活動

洗濯バサミの活動

ピンクタワーと茶色の階段を組み合わせて積む

家の中では「触ってはいけないもの」「手の届かない場所にあるもの」がたくさんある子どもにとって、なんでも触り放題の教室は最高の遊び場です。洗濯バサミやトングといった家庭によくあるものを教具にしているのも、子どもの興味を惹きつける理由のひとつだと思います。

教具は子どもの発達の度合いや好みによって定期的に入れ替えられて、常に「ちょうど良い難易度」が保たれています。手作りの教材も多いので「電車好き」「動物好き」など子どもの関心に応えることもできます。

数字好きな子が縫い物にも興味を持てるように、数字モチーフの縫い物教材を作りました

モンテッソーリの活動は英語で「Work」と呼ばれていますが、日本語では「お仕事」や単に「活動」と呼ばれています。教室では子どもがそれぞれ好きなことをやっており、教師は必要に応じて子どもの手伝いをするというスタイルで過ごしています。

はじめて来た子はあれやこれやと手当たり次第に散らかしますが、気持ちが落ち着いてくると気に入った活動を繰り返すようになります。ひとつ終えたら元の場所に戻し、また次の「お仕事」に向かいます。好きなものにはじっくり集中するので、2歳児でも長い時間を飽きずに「お仕事」しています。

同じテーブルに座っている子どもが隣同士で違った活動をしているのはモンテッソーリスクールでよくある風景です。それぞれにじっくりと自分の好きなことに取り組んで満足している子は、他の子が違う活動をしていることを当たり前に受け入れています。

教室においてある教具は大抵はひとつずつしかありませんから、友達がやっていることに興味があれば、使い終わるまで待つことを自然に覚えていきます。

隣同士、全く違う活動をしています

私の勤務園では保育時間のほとんどが「お仕事」の時間ですが、園によって取り入れ方が異なりますので、見学の際に確認すると良いでしょう。

個別の関わり

モンテッソーリスクールが個別活動を基本としているのは、小さな子どもの発達段階に合わせているからです。幼児が公園で遊ぶ姿を想像するとわかりやすいと思いますが、2〜3歳はほとんどが個別遊びの時期です。友達と一緒にいてもそれぞれが好きな遊びをしています。

この発達段階の子どもは、ひとりで何かに集中することによって成長します。また、月齢の違いや発達差など個人差が大きい時期でもあるため、それぞれの子どもが自分の発達や興味のレベルにあったものを選べるモンテッソーリスクールは、多くの子どもにとって馴染みやすい環境だと思います。

教師も必要な子どもに個別のサポートをしますので、その子の個性や特性、関心を把握しやすいという良い点もあります。それぞれの好みに合わせて新しい教具や活動を紹介して活動の幅を広げていくこともできます。

ただし、すべてにおいて個別活動を良しとしているわけではなく、5〜6歳になり少しずつ友達と協力したり、役割分担ができるようになればグループ活動も増えていきます。同じテーマの事柄を複数の子どもが手分けして調べる、といったテーマ学習も行います。

異年齢が混在する環境

子どもそれぞれが自分の好きな活動をする、というと「自己中心的な子にならない?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、子ども同士の関わりによって社会性もしっかり育まれます。モンテッソーリスクールでは年齢の違う子どもたちが共存することが多く、幼稚園や保育園なら、たいてい3〜6歳の子どもが同じクラスで過ごします。

教師があまり前にですぎず、子ども同士による相互の助け合いを大事にしているので、「お仕事」のやり方を教え合うなど経験のある子どもがそうでない子どもに教える文化があります。年齢が違っても全員が友達ですし、互いの得意なことがわかっているので「このお仕事なら、○○ちゃんに聞いてみよう」となりやすいのです。

自分よりも小さな子が入園してきた時はかいがいしく世話をします。自分も小さな頃に年上の子にされたように、次に自分が教える番が回ってくることを楽しみにしています。

もう一つの利点は、同じクラスで年長の子がやっている活動をよく見て知っていることです。まだ自分には難しい「お仕事」も、時が来れば自分もできるようになるという憧れや目標のようなものを持つことができます。

身の回りの不思議を知る

モンテッソーリの幼児期の学びは5領域(日常生活の練習・感覚・言語・数・文化)で構成されています。

2〜3歳児のうちはハサミやのり、鉛筆など指先の動きを洗練させる「日常」の活動、五感に代表される感覚器官の成長を助ける「感覚」などで学びの基礎をしっかりと固めますが、それらが進んで3〜4歳では「言語」や「数」などで抽象的な事柄を学び、さらに5〜6歳ごろに「文化」で知的好奇心を満たすまでを系統立ててプログラムが用意されています。

「感覚」活動のひとつ、色彩について学んでいます

「文化」はモンテッソーリスクールの特徴的なプログラムですが、地理・歴史・生物・美術など自然科学の要素をふんだんに取り入れた活動です。宇宙・惑星について学んで模型を作ったり、世界地図上に国旗を配置したり、粘土で地形を作ってみたり、植物を観察して構造を学んだりといった実体験をベースにした学習です。

生命の歴史について学んでいます

日本地図を組み上げています

モンテッソーリスクールでの学びとは、子どもが知りたいと願う心理を探求するための知識を授けるプログラムだと思います。子どもが探求したい究極の心理とは「この世界はどうやってできているのか?」という問いです。自分で決めた問いの答えを自分自身で探すための基礎体力をつけることが、幼児期の目的と言えるでしょう。

さて、ここまでモンテッソーリスクールの特徴をざっくりとまとめてみましたが、いかがだったでしょうか?皆さんの地域にもモンテッソーリスクールがあると思いますが、学校によって特色やプログラムが若干異なると思います。気になる学校があれば、説明会や体験会に参加して詳しく調べてみてください。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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