2023.10.23
いつどこで起こるのか分からない災害。小さな子どもと暮らす家庭では、備えの必要性と同時に、大きな不安も感じますよね。“いつも”と“もしも”、そこに垣根を設けない「フェーズフリー」。その暮らし方はどんなものなのか、専門家に聞きました。
index目次
フェーズフリーって?
教えてくれたのは
- 佐藤唯行さん
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社会起業家/フェーズフリーファウンダー
防災を持続可能なビジネスとして多角的に展開している。その一つとして、フェーズフリーを提唱し、その推進において根源的な役割を担う。フェーズフリー協会ほか複数団体の代表を務めている。
いつもの暮らしを豊かにし、災害時は助けとなる
防災用品といえば、普段はどこかに保管しておき、もしもの時に取り出すもの。そんなイメージがありますよね。家族にとって何が必要なのか想像して、一生懸命準備して…。でも気が付くと賞味期限が切れていたり、使い方を理解していなかったり、なかなかハードルが高いものです。
「フェーズフリー」とは、日常時と非常時に〝フェーズ(区切り)〞を設けず、どちらのシーンでも役に立つものやサービス、アクションを実現しよう、という考え方のこと。例えば液体ミルクは、外出時の手間削減など、日常を助けてくれながら、非常時にも役立つ、まさに「フェーズフリー」なアイテムです。普段の暮らしも豊かにしてくれるものだから取り入れやすく、無駄がないのでサステナブルな取り組みでもあります。
「フェーズフリー」なアクションは、考えてみると身近なところにたくさんあります。例えば土鍋でごはんを炊くと、ふっくらとおいしいごはんを楽しめて、非常時の練習にもつながります。子どもと一緒にチャレンジしてみるのも、災害について家族で話すきっかけになるかもしれません。
普段からできる取り組みとは?
Point1.洗い物を減らす工夫を
普段からキッチンに立つのなら、自然と洗い物を減らす工夫をしている人も多いのでは。いつもの“楽ちん”が、災害時、断水した時に活用できます。お皿は撥水加工のものやワンプレートを選ぶのも一つの手。時には牛乳パックを開いてまな板として活用したり、ポリ袋などの使い捨てを使ってみたり、方法はいろいろあります。
Point2.いいモノを選んで快適に
よく使うモノをちょっとこだわって選ぶと、気分が上がりますよね。普段の暮らしを豊かにしてくれて、非常時にも役立つ、そんなアイテムが続々登場しています。例えば、非常時はバケツになるほど強い撥水生地を使用したバッグ。普段の雨の日にも便利です。他にもオシャレな柄が計量に役立つ紙コップ、濡れた紙に書けるボールペンなど…。ぜひお気に入りを探してみて。



Point3.楽ちんごはんを常備しよう
仕事に家事に子育てに、ママとパパはやる事がたくさん。レトルト食品や缶詰などをストックしておくと、忙しい時に重宝します。ごはんと混ぜるだけの缶詰や、温めなくてもおいしいカレーなど、商品も日々進化しています。家族の好きなものを見つけて常備しておくと、普段の心の余裕につながり、いざという時も役立ちます。
Point4.たまのカセットコンロごはんで家族だんらん
カセットコンロとカセットボンベは、電気やガスのライフラインが絶たれた時に役立つだけでなく、お鍋料理などを楽しむのにも便利ですよね。定期的に取り入れて、みんなで食卓を囲みましょう。自然と使い方に慣れ、カセットボンベの在庫確認もできます。他にも、土鍋でご飯を炊いてみるのもおすすめです。
これも知っておこう!
ペアレンツバッグは最強の防災グッズ!
おむつにおしりふきにお着替えに…。さまざまなケースに備えた子どもの必需品を、なるべくコンパクトにまとめたペアレンツバッグは、非常時にも心強い存在。普段の快適なおでかけのため、そして非常時のためにも、常に中身をチェックしましょう。
防災サービス「防災ゆうストレージ」
災害時に必要なものを専用ボックスに詰め、地盤が固い場所にある倉庫に預けておける、日本郵便と寺田倉庫共同企画のサービス。地震や災害が起こった際に、避難先まで届けてくれます。月額275円から。
[問い合わせ]
寺田倉庫 050-3198-9590
https://www.post.japanpost.jp/life/you_storage/introduction/
広がっていく「フェーズフリー」な取り組み
2023年5月にオープンした北海道・小清水町の防災拠点型複合新庁舎「ワタシノ」は、「フェーズフリー」の考え方を取り入れ設計されました。フィットネスジムは災害時の避難スペース&シャワールームに、カフェは炊き出しスペースに、ランドリーは非常用水の確保や衣類洗濯に活用されることが想定されています。
今後、公園や公共施設など、子育てファミリーにとって身近な場所でも、この考え方がますます広がっていきそうです。
フェーズフリーな取り組みを通して、普段から家族で防災について意識していきたいですね。
イラスト/しらいしののこ
※この記事は、2023年9月発行の「ぎゅって首都圏版10月号」に掲載した記事を再編集したものです