ひらがなが少しずつ書けるようになる4〜5歳になれば、友達や家族に短い手紙を書くのが楽しくなります。今日は古代ギリシャの暗号化技術でメッセージを暗号にする方法を紹介します。ちょっと謎めいた楽しい言葉遊びです。

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暗号で手紙を書いてみる!?

モンテッソーリは2歳半〜5・6歳までを意識的に言葉を吸収する時期だと言っています。この時期には身近な物をじっと観察したり、触れたりする中で物の名前を爆発的に覚えます。語彙(ごい)の広がりとともに言葉と文字との関係を知り、文の組み立てを完成していきます。

ひらがなの50音に慣れていくのはだいたい4〜5歳からですが、この時期は自分や友達の名前を書くことや単語をつづることに関心が高くなります。私の勤務先の年長児は、友達や保育者によく手紙を書いています。たわいのない1、2文のお手紙ですが、手紙を贈り、贈られることは子どもにとって楽しいイベントのようです。

今日は「お手紙」に少しの謎を加える「暗号あそび」について紹介したいと思います。遊び、と言いつつ古代ギリシャの歴史や文化、ロマンにも触れられますよ。

古代ギリシャ スパルタのスキュタレー暗号

紀元前6世紀の古代ギリシャにはまだ大きな帝国が存在せず、いまでいう市町村がそれぞれに国家を形成して(都市国家)互いに争っていました。なかでもスパルタ国の市民は団結力が強く、戦闘に大変強かったと言われていますが、そのスパルタ軍が作戦を伝令にするために使ったといわれているのがスキュタレー暗号です。

スキュタレーとはギリシャ語で「バトン」や「」といった意味で、円筒に細く切った羊の皮を巻きつけて通信文を書きました。皮を筒から外すと通信文は意味のない文字列となり、部外者に判読されずに済みます。受け取った相手が同じ太さの円筒に再び巻きつけると通信文を読める、という単純な仕組みです。

今回はメッセージを「鉛筆」に巻きつけてみましたが、円筒型なら太めのマジックペンやラップの芯でも構いません。太めの方が文字を書きやすいと思います。

用意するもの

紙、鉛筆、ペン、ハサミ、セロハンテープ

  1. 紙を細く切る
  2. 棒に巻きつける紙が重ならないように、巻き始めを斜めにするのがポイントです。
  3. 文字を書き込む
    今日のおやつのお知らせを書いてみました。裏返してもう1文書きます。空いた場所に「ママより」と付け加えてみました。
  4. 棒から外す
    暗号の出来上がりです!
    同じ太さの鉛筆を子どもに渡して、解読してもらいましょう。巻き始めを斜めにして巻く、というコツを伝えてください。

古代ギリシャ ローマのシーザー暗号

次に紹介するのは、古代ローマではスパルタのライバルにもあたる都市国家、ローマの暗号です。先ほどのスキュタレー暗号が文字の配置を変える「転字式」と呼ばれているのに対して、シーザー暗号は「換字式」と呼ばれており、ある法則にしたがって、文字を他の文字に「入れ替える」ことによって暗号化する方法です。

古くは紀元前20世紀の古代バビロニアから使われたようですが、古代ローマでは有名な英雄ジュリアス・シーザー(カエサル)がよく使ったことから「シーザー暗号」と呼ばれています。

こちらも暗号としては単純な仕組みなのですが、スキュタレー暗号よりもやや高度です。この暗号を試してみる場合には、手元にひらがなの50音表があるといいでしょう。

例としてひとつ暗号を作ってみました。今回は文字を「後ろに2文字ずらす」という方法で暗号化しました。もちろんずらす文字数はいくつにしても構いませんが、子どもと遊ぶにはあまり複雑すぎないない方が良いと思います。

「あ」を2文字後ろにずらすと「う」です。同様に「い」は「え」となり、「う」は「お」になります。「あいうえお」を2文字ずつずらすと「うえおかき」になります。

2文字ずらす
あ→う
い→え
う→お
え→か
お→き

この法則を使って暗号化したメッセージがこちらです。

むつうちみ(濁点)よは!
このままでは全く意味がわかりませんが、「2文字戻す」という「鍵」がわかれば解読可能です。50音表を見て、1文字ずつ解読していきましょう。「む」を2文字戻すと「ま」、「つ」を2文字戻すと「た」…というふうに続けます。

すると、

「またあそぼうね!」と解読できました。初めて子どもと解読するときには「2文字戻す」という「鍵」を伝えて、2〜3文字程度の短い単語からやってみてください。なれてきたら少しずつ長い文字数にチャレンジしてみましょう。子どもに暗号を作成してもらうのもいいと思いますよ!

もっと深めてみよう

インターネットを経由した情報社会になり、現代でもクレジットカード情報や個人情報などをやり取りする際に欠かせない暗号化の技術。古代に起こった暗号の発明が現代まで脈々と続いているという事実はかなり興味深いですよね。

今回は言葉遊びとして暗号にチャレンジしてみましたが、ここから発展してもっと学びを深めていくことができそうです。もっと複雑な暗号を考えてみるのも楽しいでしょうし、小学生以上のお子さんなら、暗号発明の歴史についても掘り下げて見るのもいいでしょう。あるいは、古代の人々の生活に着目するとか、世界史や世界地図(地理)に興味を持つかもしれません。

ひとつの遊びから新たな興味や疑問が生まれて「学びの連鎖」が起こると、学ぶことはもっと楽しくなります。子ども自身が気がついたことや面白いなと思ったことを深めていくきっかけを大人が作ってあげられるといいですね。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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