5月も終わり、保育園生活にも少しずつ慣れてきたでしょうか。ところで皆さんは、わが子が通う園について、どのくらい知っていますか?日々の活動を通して子どもたちが身に付けている力と、先輩ママ・パパからのエールを紹介します。

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教えてくれたのは

馬場耕一郎さん

おおわだ保育園 世田谷豪徳寺 園長。保育園運営の現場に立ちながらら、厚生労働省子ども家庭局保育課保育専門調査官として、「保育所保育指針」の改定に携わる(2017年3月告示)。2020年より内閣府子ども子育て本部上席政策調査員に就任。

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社会の変化に伴って保育園のカタチも進化中

ぎゅって読者の多くのお子さんが通っている保育園。その性質や体系から、 長らく〝子どもの生活の場〞としてのイメージがあったと思いますが、2017年に改定された保育所保育指針(※)にて、実は大きな変化がありました。それは、〝幼児教育で育みたい資質・能力〞として、下に示す3つの柱をベースに、具体的な内容が示されたことです。

この背景には、①社会変化に伴って生活体験が不足し、子どもの育ちに困難が出ていること②幼児教育の重要性が世界的にも高まっていること③0〜2歳の保育ニーズが高まり、質の向上が求められていること、などがあります。

もちろん、本来この指針を参考にするのは園の先生方ですが、保護者である皆さんも概要だけでも知っておくと、保育園での活動をより深く理解したり、お子さんの成長を違う視点で見られたりすると思います。そんな気持ちで読み進めてみてくださいね。

(※)各保育所(園)が、より良い保育に向けて創意工夫ある取り組みを行っていくときに、一定の質を担保し、さらなる改善の支えとなるよう、保育の内容に関する基本的事項を示すもの

幼児教育で育みたい3つの資質・能力

保育園生活の何気ない1コマにもいろいろな気付きや学びが隠れています

散歩


散歩には、非認知能力を磨くきっかけがいっぱいです。歩きながら気温の変化に気付いたり、咲いている花を見つけたりして、季節の移ろいを感じることもその一つ。他にも、横断歩道を渡るときに、単に信号が青になっているから渡ってOKではなく、“周囲の安全を確かめてから渡ることができる力”が育まれています。

給食・おやつ

保育園における食事は「健康な生活の基本」。スプーンや箸などの正しい使い方を身に付けることをはじめ、メニューに使われている食材や栄養について紹介するなどの“食育”も推進されています。園で野菜を育てて成長を観察したり、好きな野菜の絵本や図鑑を見ることで、“文字”などへの関心も生まれます。

遊び

遊びには、思考力や判断力、表現力等の基礎が詰まっています。砂遊び一つでも、自然に興味関心を持ち、友達と協力して大きな山を作るときには協同性を学びます。また、お絵描きや音楽で自分の思いを表現することは、プレゼンテーション能力を磨くことの第一歩にもなります。

保育園やこども園でも幼児教育が積極的な位置付けに

先に紹介した「保育所保育指針」改定の大きなポイントの一つに挙げられるのが、 〝保育所保育における幼児教育が積極的な位置付けになった〞こと。保育園・幼稚園・認定こども園のどこに通っていても、平等に同じ質やレベルの幼児教育・保育を受けられるように保障することが望まれるようになりました。

これは小学校の学習指導要領(2017年以降)ともつながっていて、学力や知力だけでなく、子どもたちが社会に出たときに役立つ力(=生きる力)を育んでいこうという狙いがあります。

難しいことを言いましたが、この年齢の子どもたちに大事なのは、伸び伸び遊び、いろいろなヒトやモノに触れること。上に示すような、保育園でよく見る風景にもいろいろな〝気付きや学び〞が隠れています。

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※この記事は、2021年5月発行の「ぎゅって6月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト:つたざわあやこ
写真協力:おおわだ保育園