今回は「親子で家事」をテーマに、子どもにお手伝いをしてもらう意義や、教えるときの心構え、おすすめのお手伝いなどを紹介します。忙しい毎日だからこそ、日々の家事の中で子どもの力を伸ばしつつ、家族の大切な戦力になってもらいましょう!

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教えてくれたのは

鈴木みゆきさん

援学科教授。博士(医学)。専門は保育学、睡眠学。大学での保育者養成に長く携わる。手遊びや歌の創作も手掛け、Eテレ「みんなのうた」等に詞を提供。『やさしくわかる月齢別育児のきほん事典』(西東社、共著)など著書多数

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お手伝いで心の根っこや生きる力が育まれる

子どもはお手伝いを通じて、さまざまな力を伸ばしていきます。例えば、家族の一員として役割を持つことで、「自分はできる、役に立っている」という自己有用感や、「自分は家族に愛されている」という自己肯定感など、心の根っこが育っていきます。また、お手伝いは頭脳と能力の2つを伸ばす「のうトレ」にも。野菜の扱い方、配膳のマナー、掃除のコツなど、生活に必要なさまざまな知識や知恵(=生きる力)を身に付けることもできるのです。

「お手伝いしたい!」の意欲が溢れる大事な時期

親は忙しいとつい「お手伝いさせるより、自分でやったほうが早い」となりがちです。その気持ちもとても分かるのですが、幼児期こそ「お手伝いをしたい!」という意欲が溢れている時期。意欲が高いときにやることは、どんどん吸収できます。平日は無理でも休日は親子で家事をするなど、できるだけ経験が積めるように工夫してみましょう。

親は教え上手になろう

「お手伝い」とは言っても、最初は教える手間のほうが何倍もかかるもの。親の心構えについて、子どもの発達心理を踏まえて鈴木先生に教えてもらいました。

4歳児クラスまではやりたいときだけでOK

お手伝いの初期はやりたがるときだけでOK。4歳児クラスくらいまでは「その日の気分」が大事なので、無理強いは禁物です。5歳児クラスくらいから家族としての役割を決めてみて。園でも当番仕事があるように、家でも得意なお手伝いを任せてみましょう。

役割の大切さを感じてもらう

役割を決めても、やりたがらない日はあるはず。そんなときは責めるのではなく、役割の大切さを感じてもらう機会にしましょう。例えば、新聞を持ってくる役割なら、親が「あれ?新聞どこだっけ?」と探していれば、子どもはドキッとします。

翌日、新聞を持ってきてくれたら、「やっぱり持ってきてもらえると助かるよ」と感謝を。すると「やっぱりお手伝いするといいな。やらなきゃダメだな」と感じてくれるはずです。

他の場面と結び付けて褒める

お手伝いをしたら、「あなたがいてくれて助かる」というメッセージを伝えましょう。他の場面と結び付けて褒めるのもいい方法。例えば、レタスを上手にちぎっている子に「器用だね。だから折り紙も上手なんだね」と褒めれば、「私ってこういうのが得意なんだ」と自信を持ち、どんどん力が伸びていくでしょう。

失敗は学びのチャンスに

お茶わんを割るなどの失敗をしたときは、「ケガはない?」と子どものケアを最優先に。「ちゃんと持ってって言ったでしょ」などと言えば、子どもの自己肯定感はしぼんでしまいます。また、失敗は学びのチャンスにしたいもの。正しいや
り方を教えるよりも、「次はどうしたらいいかな?」と一緒に考えるのがおすすめです。「どうやって持つと落とさないのかな?」など、理科の実験風に検証しても楽しいでしょう。

断るときは次の機会を約束する

子どもはお手伝いしたがっているけど、親の都合で断りたい、というときは次の機会を約束して。「今日は急いでごはんを作らなきゃいけないから、2つ寝たら一緒に作ろう」など、そのときにできない理由を分かりやすく説明して、次の見通しを持たせましょう。

きょうだいのお手伝いは分業で

上の子がお手伝いする姿を見て、下の子が「自分も同じことをやりたい!」となることも。発達的に同じことが無理な場合は分業しましょう。途中まできょうだいで一緒にやって仕上げは上の子にやってもらうか、「切った野菜をボウルに移す」など下の子でもお手伝いできる場面を作ってあげるといいですね。

イラスト/きどふみか

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※この記事は、2021年7月発行の「ぎゅって8月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです