親子で楽しく工作を始めたはずなのに、気がつくと大人だけが必死に作っていて子どもは飽きてしまっていた。という話をときどき耳にします。さて、親子はどこですれ違ってしまったのでしょう?今回は一緒に作る楽しさを共有するにはどうしたら良いか考えます。

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「子ども目線」で楽しい制作ってどんなものでしょうか

私の勤務先の保育園では、年間通して工作を保育に取り入れています。春には種、夏には葉や貝殻、秋には木の実などの自然物もよく使いますし、空き箱やペットボトルのフタ、牛乳パックなどの廃材を利用することも多いです。

季節の行事制作なら鯉のぼりやひな人形、クリスマスのリース、お正月のコマ…などなど、一般の保育園や幼稚園でよく行われているものとさほど変わりはないと思います。

ただしモンテッソーリ園なので、いかに「その子らしく」楽しんで作れるかということを子どもの目線で考えて工夫をしています。もちろん、大人である私たちが子ども視点で考えること自体難しいのですが、大人の思い込みをいったん脇に置くことを意識してやっています。

家庭でも子どもと工作をしたり、料理をしたりと一緒に何かを作る場面があると思います。そんなとき、どうしたら子どもが楽しんで、良い時間を過ごせるでしょうか。今回はモンテッソーリ教師の経験から得たポイントを紹介しますので、子どもと何かを作るときのヒントになればうれしいです。

「作ること」自体が目的。だから、プロセスを楽しめるようにする

具体的なポイントに入る前に少し概念的な話をしますが、「作る」と言う行為について、大人と子どもでは目的が異なっていることをご存知でしょうか。

料理を例に考えてみると、大人は「時間内にイメージ通りの食事が出来上がること」を目的にしているのだと思います。

しかし、子どもの場合は少し違います。もちろん上手に出来上がればそれに越したことはありませんが、それよりも大事なのは夢中になって作る過程を楽しむことです。

「大人のまねをしてみたい」という憧れを満たしたり、「こうやってみたらどうなるのかな?」と実験したり、「こんなの作ってみたい」とイメージしたり、「どうやったらできるだろう」と試行錯誤します。それでうまく行かなかったとしても「楽しかった!」と思えば、また次も作ってみようという気持ちが生まれます。

大人はすでに何度も料理をしていますから、「こうやればうまくできる」というやり方を持っています。もしも子どもがそこから外れたことをしようとすると、ついブレーキをかけたり、やり方を変えさせようとしてしまいます。

これが親子のすれ違いの根本原因であったりするわけですが、子どもの楽しさを優先に考えれば、大人の常識をそのまま当てはめない方が良いのです。自分のやり方と違ってもいい、とある意味で自分のこだわりを手放すことが子どもの創造性を伸ばすポイントかもしれません。

子どもの1番の関心は五感で感じること

五感が育つ時期の幼児の1番の楽しみは、感覚を刺激することです。見て・聞いて・触って・匂いを嗅いで・味わってみることに夢中になっているうちに指先の動きが洗練されていって、作ることが上手になっていきます。

楽しい!と思いさえすれば何度も繰り返し、繰り返しているうちにだんだんうまくなっていくので、大人は子どもが楽しくなるようにそばにいると良いと思います。

具体例あれこれ

具体的な例をあげて、子どもとの関わり方を紹介します。

クレヨンで絵を描く

子どもが楽しいポイント:クレヨンで描く、線を引く、ぐるぐる動かす、色を楽しむ、塗りつぶすなど

子どもの描くりんごは大人が描くものとはだいぶ違うかもしれません。隣に座って大人もお絵描きを楽しんでみましょう。「ママはこんな感じでりんごを描いてみたよー」と見せてみるのもいいでしょう。子どもが紫色のりんごを描いていたら、「それもいいね」と受け入れてください。楽しく描いているうちに指先がのコントロールがうまくできるようになって、少しずつ絵も上達してきます。

お料理

子どもが楽しいポイント:触った時の感触、手で握って潰す、匂いを嗅ぐ、野菜を切って断面を見るなど

包丁を使うときは、安全のため最初に使い方を見せます。初めて切る時には、子どもの手の上から手を添えてゆっくり切ってみましょう。パンケーキの生地を混ぜる、クッキーの型抜き、お団子を丸めるなど比較的危険の少ないものは、じっくり感触を楽しんでみて。

食材を無駄にしないよう「おいしく作って食べようね」と伝えますが、多少は遊びになってしまっても良しとします。いい匂いだね、おいしそうだね、と出来上がりを楽しんでみてください。

絵の具で遊ぶ

子どもが楽しいポイント:絵の具を混ぜる、色の変化を楽しむ、筆を使う、色を伸ばす

初めてなら写真のように1色だけを使って絵を描いてみるのも良いと思います。指を使ってスタンプするのも楽しいです。

色を混ぜるなら赤・青・黄の3原色から試してみると良いでしょう。赤+青=紫、赤+黄=橙、黄色+青=緑のように変化がわかりやすいです。楽しくなって全て混ぜてしまって茶色になってしまうかもしれませんが、それもありだと思います。大人も隣で同じことをやってみて、こんな色になるんだね、面白いねと会話してみてください。

工作(切る・貼る)

子どもの楽しみ:切り紙、のり貼り、のりが伸びる、くっつく、手がベトベトになる

ハサミやのりなどの道具は使い方に慣れるまで何度も練習したいもののひとつです。工作を楽しむうちに少しずつ上達していきます。大人が隣でハサミの使い方を見せてもいいですし、子どもが嫌がらなければ「こうするとやりやすいよ」と手を添えて一緒に切ってみるのもありです。

のりはベトベトした感触を楽しむ子がいたり、逆に手の汚れを嫌がったりする子もいます。小さめのおしぼりを用意して、手が汚れたら拭くように最初に伝えるといいと思います。部屋中をベタベタにしないように、あらかじめ新聞紙を引いて「この新聞紙の上ならベトベトにしてもいいよ」と約束しておくのもいいですね。

たくさん切ったり貼ったりして、何かを作り上げることを通して面白さを味わってみましょう。こんなのできたね、面白いね、と楽しさを子どもと共有してみてください。

どんな活動でも、回数をこなせば上手になっていきます。指先も細かく使えるようになりますし、道具の扱いもスムーズになります。週末などで時間をとれる時には、おうちで子どもと何かを作ってみてください。

この記事を書いたライター

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堀田はるなさん

モンテッソーリ原宿子供の家・モンテッソーリすみれが丘子供の家教員、保育士。アパレル業界、eコマース、金融など様々な業種でのマーケティング業務を経験後、教育の道へ転身。日本モンテッソーリ協会承認モンテッソーリ教員免許取得。著作「子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド」。

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