「最近、怒ってばっかりいるかも…。」と落ち込むワーママのみなさん。「アンガーマネジメント」も話題ですが、うまく出来ない人も大丈夫。自衛隊メンタル教官式、怒りの対処法を聞いてみました。

index目次

そもそも冷静になるのは無理

最近、すごく怒っちゃった、怒りを感じた出来事はありますか?

  • 「朝、子どもが言うことを聞かなくて、つい怒っちゃいました」
  • 「仕事のやり方をめぐって、同僚と口論になってしまった」
  • 「上司に理不尽な指示をされてカチンときた」

などなど、いろいろあると思います。こんな場面で、本来どうすればいいのでしょうか。メンタルケアのプロである下園さんに解説してもらいましょう。

お話を聞いたのは

下園壮太さん(メンタル・レスキュー協会理事長)

1982年陸上自衛隊入隊。メンタルヘルス教官として、大事故や自殺問題、惨事対処など多くのカウンセリングを手がける。2015年定年退官し、現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長。一般向け「感情ケアプログラム」の普及にも務めている。>公式ホームページ

「怒り」へのあなたの対処法は?

さて、先ほどの怒りを感じる出来事で、あなたの対処法は、次のうちどれでしたか?

  1. ぐっとガマン、こらえた
  2. 怒りに任せて反撃した、爆発した
  3. 冷静に判断できるよう意識した

下園さんは「3つの回答のいずれも問題があります。」と言います。

1.「ガマン」の問題点

  • ガマンは疲れる
  • “言いたいことが言えなかった”と自責の念にかられやすい
  • 自分の中に感情が残ってしまう

2.「反撃」の問題点

  • 相手の新しい「怒り」を買いやすい
  • あとで「感情的になってしまった自分」を後悔しやすい

3.「冷静に判断」の問題点

  • あまり現実的ではない
  • 今回はたまたま冷静になれたとしても、いつもうまくできるわけではない

「感情は全くコントロールできないわけではありません。でも、人間とは、感情が理性よりも圧倒的に強い生き物なんです。」と下園さん。

よって、怒りをコントロールしようとする「アンガーマネジメント」については限界があると言います。

「アンガーマネジメント」の限界

まず、怒りには三段階があります。

第1段階:本人も怒りと認識しづらい「違和感」や「イライラ」状態

第2段階:本人が認識できている「怒り」状態

第3段階:本人すらコントロール不能な「激昂」状態

「一般的なアンガーマネジメントの多くが、理屈が通用する第2段階での対処のみ。第1段階、第3段階については、ほとんど見かけません。アンガーマネジメントはそれが上手くいく相手や状況にはいいのですが、限界があるのです。」

また、「感情をコントロールする、マネジメントするという発想は、万能感を刺激しますが、結局“できないこと(無理なこと)”を自分に課してしまいます。そんなとき、西洋人だったら“仕方ない”と割り切れるかもしれない。

でも、日本人は、うまくいかない原因を自分に求め、自信を失い、その結果、余計に感情的になるという悪循環になりがちなのです。」

「怒り」はコントロールできないし、マネジメントしなくてもいい。「怒り」は否定せず、「ケア」することが大切。

そこで、具体的なケアの方法を下園さんに聞いてみました。

ムカッと来たらまずは「6秒ガマン」

「怒りケア」のステップは次の通りです。

1.怒りを感じたら、まず「6秒ガマン」

怒りの感情は、一瞬にして、心と体を「戦闘モード」に。だれもが衝動的になってしまいます。ただし、ピークは「6秒」とも。まずは6秒だけ耐えて「怒り」の頂点をやり過ごします。

2.新しい刺激を入れない

次は新しい刺激を入れないようにします。可能なら「その場を離れる」「一人になる」。もし不可能ならば、注意を他のものに向けるか、呼吸法で「体をゆるめる」。

3.あえて怒りに触れてみる

12で、怒りのレベルが下がるのを待ちます。レベルが下がったと感じたら(下がるまでの時間はケースそれぞれ)、今度は「あえて怒りを思い出してみる」ことをします。

ただし、再び感情に乗っ取られそうになったら、ただちにやめてください。もし意識的に怒りに触れてみて、「嵐は去った」と感じるようなら4へ進みます。

4.「怒り」について分析する

感情はおさえつけて放置すると「恨み」に育ってしまいます。「分析する」「考える」ことで本当の意味でおさまりやすくなるのです。

方法はいくつかありますが、ここでは、「7つの視点」というメソッドを紹介します。

怒りを分析する「7つの視点」

出来事について、次の視点で振り返ってみてください。

1.自分視点

「私はあのとき怒りを感じたよね」「私はどんな状態だったっけ」など

2.相手視点

「あの人は何を伝えたかったのかな」「彼の不安はなんだろうか」など(うまくいかない場合は次へ)

3.第3者視点

「他の人が見たら、この出来事はどう見える?」

4.宇宙視点

「宇宙から見たらどんなふうに見えるだろうか」

5.時間視点

「1カ月後はどうなっているか」「1年後はどうなっているか」など。

6.感謝視点

「あえて、この対象に感謝できるとすれば?」

7.ユーモア視点

「この出来事をコントにするとしたら?」「川柳にできるか」

「上手にできなくても全く構いません。要は“視点を広げる”のがポイントです。ちょっとでも広がったらラッキー、くらいに気楽に考えて、ぜひ試してみてください」と下園さん。

実際に「7つの視点」を試した人に聞いてみると…。

  • 「同僚とのいざこざについて、感謝視点で考えたら、“希望の部署で好きな仕事をやらせてもらっているから、ここまで熱くなれるんだな”と思えてきた」
  • 「携帯電話の店員の対応が悪くて頭にきたけど、川柳にできるか考えたら、なんか楽しくなって。最後の5文字が決まったときはヤッタ!って思えた」

「“怒り”という感情は、本人でも気づかないうちに、ガマンして押しつぶしていることが多いのです。怒りを感じたら否定せずに、こまめにケアしておくこと。結果的に突然の暴発を防ぎますよ。」と下園さん。

慣れるまで少し手間に感じるかもしれませんが、決して難しくはない怒りのケア。ぜひ実践して、心軽やかなワーママライフにできたらいいですね。

この記事を書いたライター

ライター一覧 arrow-right
向山奈央子さん

フリーライター&エディター。仕事で走り回りすぎて、気付いたら一人娘は中学生に育っていた! ライフワークで「感情ケアプログラム」指導者コース修了。忙しいワーママを見ると、つい(聞かれてもいない)アドバイスをしてしまう。

向山奈央子さんの記事一覧 v-right