今回は、身近なコミュニケーション手段の一つである“読み聞かせ”に改めて注目。 お話を聞いた仲本美央先生は、少し見方を変えた“読みあい”という言葉を教えてくれました。 親も子も幸せになる、その秘けつとは?

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お話を聞いたのは

仲本美央先生

白梅学園大学・大学院教授。保育現場における絵本や物語を読みあう活動や子どもの言葉に関する研究に取り組んでいる。著書に『絵本から広がる遊びの世界』『絵本を読みあう活動のための保育者研修プログラムの開発』など

絵本の“読みあい”の基本ポイントや読者のギモンQAはコチラ

読み手と聞き手、互いに楽しみあう「読みあい」

私はこれまで、“絵本は人と人がつながるツール”であると考えながら、保育現場や家庭で研究をしてきました。その中で、「“読み聞かせ”をしているとき、 読み手と聞き手が一緒に読んで楽しみあっている」と感じる瞬間が多くあり、“読んで聞かせる”だけではない“読みあい” を提案しています。

働きながらの子育てであれば、なかなかその時間が取れない日があるかもしれません。けれど、何冊読むかより、どう読むかが重要。本が持つ一番大きな力は、子どもの想像力を育む力です。親として「読んであげる」ことに固執せず、“読みあい” の時間の中で、互いの五感をフ ル活用して読むことを楽しみ、子どもと一緒に自分の幸せな時間も見つけてください。

「絵本」や「読みあい」が子どもの成長に与える影響って?

人と人との関係を 築く・深める

“読みあい”にはまず、絵本を媒介して「人と人の関係を築く」という効果があります。もちろん日常の会話でも築けるものですが、“目線を合わせる”“めくる動作 一緒にする”などを協同でやっていくことで、より一層関係性を深めたり、人に親しみを持つこと・感情を交わしあうことができるようになります。

読み手と聞き手がお互いに幸福感や喜びを生み出す活動なのです。

人・モノ・出来事への興味関心を広げる

絵本は、人・モノ・出来事という3つの要素について描かれているものがほとんど。それに対する子どもたちの興味関心を広げたり、深めてくれる効果があります。

大人と一緒に会話をしながら読み進めていくと、プラスαの知識や概念を知ることができます。例えば、飲み物を注ぐシーンがあれば、身近な他の飲み物を挙げて「〇〇ちゃんはどれが好き?」と聞いてみるとよいでしょう。

言葉や絵からイメージする力を育てる

絵本に出てくる言葉や絵、写真を見ることで、それらを知るだけでなく、イメージを広げる力を身に付けることができます。子どもにとって「想像力」は人として生きる上で重要な力の一つです。大事にしていきましょう。

また、絵本の読みあいを通じて、子どもの成長・発達を感じたり、気持ち(心情)を読み取ることもできます。わが子がどんなことに興味や関心があるのかを知るきっかけにもなると思います。

年齢別!“読みあい”のポイント・絵本の選び方

0歳

0歳児は色彩や線がはっきりしたものに対して注意が向くと言われています。赤ちゃん向けの絵本は、そういったものが多いですよね。また、色みだけではなく、「顔」も注視するとされています。ママの顔、子どもの顔、動物の顔…、目と鼻と口がある、そういった表情を描いた本も喜んでくれると思います。

その他、「音」もポイント。「もこもこもこ」などリズム感のある言葉の絵本やオノマトペが出てくる絵本も興味を持ちやすいはずです。目の前に本を見せて「あれ?よく見ているな、聞いているな?」と感じたら“、読みあい”の始めどきです。

1~2歳

1〜2歳は、歩く・座る・握るなどの動作ができて、人のまねをしていろいろなことをやってみようとする年齢です。なので、“まねごとで遊べる”絵本があるとベスト!例えば、 離乳食が終わってスプーンやフォークを使って“食べる”ことができるようになってくるこの時期は、食べ物が出てくる絵本を選び、「いただきます」のあいさつをしたり、食べるまねをして遊びましょう。

日常生活で触れ合っているもの、食器・靴・洋服・動物・乗り物などが登場するものもオススメ。使い方や動物の鳴き声など、まねっこしながら読んでください。

3~4歳

3〜4歳は言葉が巧みになってきて、絵本の中でも言葉遊びができたり、物語の理解が深まる年齢です。絵本の内容を自分なりに読み解くことができるので、しりとりのような言葉遊びが含まれるもの、前・後ろ・右・左など、形や場所、色・形・状況などいろいろなことがつながっていくような絵本はとても楽しく感じるようです。  

4歳になると、思いや心情が理解できてくるので、主人公や登場人物と思いを重ね合わせて読めるといいですね。この年齢は本当にイメージを広げやすい時期なので、想像力をかきたてる絵本をぜひ読みあってみてください。

5~6歳

5~6歳は、物事に対して原因や結果を理解し、推理、調べるということがとても巧みになってきます。「次はどんな展開になるだろうか」という予想・予測をどんどんしていくような絵本が喜ばれます。また、あり得ないことや不思議なことを楽しめるようにもなってくるので、ユーモアのある絵本もいいでしょう。

さらに、図鑑や辞典、科学の本をラインアップに加えるのもオススメ。自分自身で答えを導き出しだり、疑問に思ったことを追究できる本が身近にあれば、自分から本を手に取るように育つと思います。

※この記事は、2020年6月発行の「ぎゅってsummer版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト/根岸美帆