/ 2020.06.22

今回は、身近なコミュニケーション手段の一つである“読み聞かせ”に改めて注目。 お話を聞いた仲本美央先生は、少し見方を変えた“読みあい”という言葉を教えてくれました。 親も子も幸せになる、その秘けつとは?

index目次

お話を聞いたのは

仲本美央先生

白梅学園大学・大学院教授。保育現場における絵本や物語を読みあう活動や子どもの言葉に関する研究に取り組んでいる。著書に『絵本から広がる遊びの世界』『絵本を読みあう活動のための保育者研修プログラムの開発』など

絵本の“読みあい”が子どもの成長に与える影響や、年齢別“読みあい”のポイントはコチラ

読み手と聞き手、互いに楽しみあう「読みあい」

私はこれまで、“絵本は人と人がつながるツール”であると考えながら、保育現場や家庭で研究をしてきました。その中で、「“読み聞かせ”をしているとき、 読み手と聞き手が一緒に読んで楽しみあっている」と感じる瞬間が多くあり、“読んで聞かせる”だけではない“読みあい” を提案しています。

働きながらの子育てであれば、なかなかその時間が取れない日があるかもしれません。けれど、何冊読むかより、どう読むかが重要。本が持つ一番大きな力は、子どもの想像力を育む力です。親として「読んであげる」ことに固執せず、“読みあい” の時間の中で、互いの五感をフル活用して読むことを楽しみ、子どもと一緒に自分の幸せな時間も見つけてください。

絵本の“読みあい”基本ポイント

本の内容を「誇張しすぎない」読み方で

読み方に抑揚を付けるかどうかはあまり重要ではありません。何より「誇張しすぎない表現」が大事。例えば“おばけ”が出てきたとき、絵本の内容以上に怖々しい表現をすると、肝心の絵本の内容が消え去ってしまいます。

絵本の内容を崩さない程度の抑揚や表現であれば大丈夫。子どもの想像力を大事にしながら読んであげてください。

子どもが読みたいと言ったときを大切に

時間帯については、朝・昼・夜いつでも大丈夫。よりよいタイミングを言うとすれば、子どもが絵本を手に取って「読みたい」と言うときがベストです。ただ、親にとっては、毎日その時間を確保するのは簡単なことではないと思います。読みたいときに読めないということがあれば、いつどの時間なら読めるのか、必ず“約束”をしてあげてください。

寝る前の“読みあい”もとてもいいと思います。「目が冴えてしまうのでは?」 と心配なときは、「今日は1冊読んだら寝ようね」「明日また読もうね」などと決めて、読む本は子どもに選んでもらいましょう。

読む頻度、冊数はこだわらないでOK

子どもの個性やおうちの事情に合わせての頻度・冊数で十分だと思います。何冊読むかより、読む絵本を一緒に選ぶことを大切にしてください。

“読みあい”に関する読者のギモンQ&A

※ぎゅって読者を対象にしたWebアンケートから、意見が多かったものを抜粋(2020年4月17日〜23日実施)

Q:赤ちゃんのころの絵本を読んでほしいとせがまれたときは?

本人が読みたいというものであれば、赤ちゃんのころの絵本であっても読んで大丈夫。それより、どうしてその本を手に取ったのか、子どもの気持ちときちんと向き合って楽しむことの方が大事です。ママとパパの読み方の違いが好きだったり、この絵本を買ったときの思い出を言いたいときもあります。

Q:図鑑を見るだけでも 読み聞かせになるの?

例えばカブトムシが好きな子がいたとしましょう。(1)卵から生まれて成虫になるまでのこと(2)カブトムシくんにはパパとママがいてね…など、親が物語を作ってあげられますよね。子どもと一緒に楽しむことが大事だと思います。

Q:絵本を読んでいると、質問攻めが止まりません…。

1つの質問に対してきちんと受け止めて会話をしてあげる。多少話が逸れたり、その場で読み切らなかったりしても、問題ありません。それも また“読みあい”の楽しみ方の一つだとラクに考えて大丈夫。“質問攻め”は大人にとっては厄介なことかもしれませんが、子どもにとってはいろいろと考えていることの表れだと思います。  

「すべてにちゃんと答えなきゃ」と構えるのではなく、 子どもと対等な立場で読みながら考えていきましょう。

Q:話を無視してどんどんめくってしまうときの対処法は?

「めくる動作が楽しい」「ページを素早くめくることで、絵や写真が動いているようで楽しい」 「めくる手触りや音が好き」など、“めくる”動作が止まらない理由があるは ずなので、よく見てその理由を探ってみましょう。途中でパッと止まる場所があれば、何かに興味関心を持っているので、すかさずそのページについて話をして、内容を楽しむきっかけ にしましょう。

Q:忙しいときや疲れてしまったときは、 読み聞かせのDVDを見せるでもいいの?

DVDやデジタル絵本など、便利なものがいろいろ出ていますよね。気持ちは分かりますが、まず第一に、光は刺激なので、時間に制限を設けるなど、ルールを持って視聴することが体のためにもいいと思います。  

もう一つは、DVDを子どもだけで視聴させないようにすること。一緒に見て、会話をして気持ちや考えを交し合うことが大切です。  

DVDに子守りをさせるのではなく、一緒に視聴しながらリラックスタイムをつくることが大切です。どれを選ぼうかという内容を選ぶところから、子どもとの楽しみを広げてほしいなと思います。

Q:絵本そのものに興味がない子は どうしたらいいのでしょうか?

子ども本人の好きなことが含まれる絵本を選ぶことが大事です。遊びたいおもちゃを自分で選べるようになっていれば、絵本も選ぶことができるはず。本屋さんなどで「どれが欲しい?」と自由に選ばせてみましょう。

絵本は“読まなければいけないもの”でもありません。言葉や情操を育てるには、歌やダンスなどが入口になることもあると思います。大好きなことからまずは育てて、そこに通ずる本を手に取らせてあげられるといいですね。

※この記事は、2020年6月発行の「ぎゅってsummer版」に掲載した記事を再編集したものです

イラスト/根岸美帆