2017.09.09 / 2017.09.10
藤井聡太四段の29連勝や“ひふみん”こと加藤一二三九段の引退など話題の多い将棋界。ニュースを見て興味が湧いているママ・パパも多いはず。そこで女流棋士の高橋和さんに将棋の魅力や手始めにおすすめのゲームなどを教えてもらいました。
どうも、ぎゅってWeb編集部のざわPです。電子機器まみれの子どもの遊びに一石を投じるべく、親子で楽しめるアナログな遊びをご紹介しています。
前回のコラムでは“おばけキャッチ”を取り上げました。今回のテーマは、最近何かと話題の「将棋」。
わが家はパパ・ママともに指せませんが、集中力や思考力が鍛えられそうな気がするし、脳トレを兼ねた遊びにもってこいなのでは? それに将棋を指せる人って教養があってなんだかカッコよく見える!
子どもにできるようになって欲しいなー。けど自分が知らないものを教えられないしなー。…ということで、プロ棋士の高橋和さんに何から始めたらよいかをお聞きしました。
お話を聞いたのは
- 高橋 和(やまと)さん( 女流棋士 )
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女流プロ三段。7歳より将棋を始め、14歳で当時最年少女流プロに。将棋普及への思いから現役を引退、子育てを経て、現在、子どもや女性への普及を中心に活動。TV・雑誌などにも多数出演。吉祥寺で将棋スペース「将棋の森」を運営。小6男子のママ。
大切なのは「負けました」が言えること。伝統文化を次の世代へ
― 藤井聡太四段の連勝記録や“ひふみん”こと加藤一二三さんの活躍、将棋をテーマにした映画やアニメなどのエンタメと、最近の将棋界は本当に話題が多いですね。このブームをどのように感じていらっしゃいますか?
高橋:実は将棋はずっと根強い人気があるのですが、なかなか表には出てきませんでした。いまの盛り上がりは羽生さんの時以来、20年ぶりぐらいではないでしょうか?
違うのは20年前は親世代の多くが将棋を知っていたこと。いまは両親ともに知らない家庭が多いと思います。
将棋は日本独自のカルチャーで、平安時代にはほぼいまと同じ形のものがあったことが分かっています。脈々と続く文化を次の世代につないでいくためにも、ブームで裾野が広がるのはとても嬉しいことだと思います。
― 藤井四段は5歳から将棋を始めたそうですし、将棋の森にも幼児向けのコースがあります。幼少期から将棋に触れることのよさや育まれる力などを教えてください。
高橋:将棋には「頭が良くなりそう」「礼儀が身につきそう」などのよいイメージをお持ちのみなさんが多いのではないでしょうか?
しっかりした裏付けがあるわけではありませんが、そういう側面はあると思います。例えば、アマチュア将棋では学力の高い進学校や大学の将棋部が強い傾向があります。
ただ、私が考える将棋で一番大切なことは
「負けました」が言えること
です。
将棋は勝ち負けが付く厳しい世界です。素直に言えない子もいますが、「負けず嫌い」と「負けを認められない」ことは違います。
負けず嫌いはモチベーションの源で悪いことではありません。大切なのは気持ちに折り合いをつけて、自分の足りないところを受け入れる心の持ちようです。
子どものうちに「負け」をたくさん経験することは、将棋に限らず人生できっと役に立つはずです。
やさしいゲームから遊んでみよう。初心者向けボードゲーム3選
― これだけ話題になると、子どもに触れさせてみたいと思うママ・パパが増えていると思います。どんなことから始めたらよいでしょうか?
高橋:「どこで習っていいのか分からない」という親御さんはとても多いですね。
将棋の森では初心者親子向けの無料レッスンを開催していますし、通える場所に教室があればそういった体験コースを探してみるとよいと思います。ただ、ピアノ教室などと違って数が少ないですから、難しい人もいらっしゃるでしょう。
ご家庭では本将棋を始める前に、やさしいボードゲームで遊んでみるとよいと思います。
子どもは「楽しい」の嗅覚がとても優れています。「勉強」になると途端につまらなくなってしまうので、まず初めに遊びとして楽しい気持ちを覚えることが大切です。
― ということで、本将棋を覚えるまでのステップ別にオススメゲームを教えてもらいました。
step.1 「ぴょんぴょんしょうぎ」
高橋:この本は将棋のファーストステップとして作りました。簡単なルールで、1ゲーム3分程度で終わります。
ぴょんぴょんしょうぎで覚えるのは礼儀。テンポよく遊びながら「おねがいします」「負けました」といった、ゲームに向かう上の基本的なお作法を学べます。
step.2 「どうぶつしょうぎ」
高橋:おもちゃとして置いている園もあるので、知っているお子さんもいると思います。
コマの種類で動き方が違うこと、王様(ライオン)を追い詰めるといった、将棋の基本ルールを感覚として身につけられます。
step.3 「スイスイはさみしょうぎ」
高橋:はさみしょうぎで覚えるのは“先を読む力”。
「ここに置いたら次で取られるな」「ここならコマを取れてしかも安全」というように、相手がどう動くかを考えながらゲームを進めることができれば、本将棋に進む準備はOKです。
本将棋を始めるのは5歳〜6歳頃(年長さんから)がおすすめです。
将棋の森では一番小さい子は年中さんですが、その歳ではまだできる子とできない子が分かれます。お子さんが小さいうちは紹介したゲームなどで遊んでみてください。
アプリの活用もおすすめ
高橋:タブレットやスマートフォンで遊ばせることに抵抗がないご家庭でしたら、アプリを活用するのも手です。いまは無料で利用できるものも多くあります。
私は息子にコマの動かし方を教えたことがないのですが、幼稚園の時にリビングに置いてあったタブレットを触っているうち自然と覚えていました。
「ぴよ将棋」(写真左)、「どうぶつしょうぎ」(写真中央)、「アナグマンの駒の動き方特訓」(写真右)などがおすすめです。
ママ・パパが「楽しむこと」、「負けましたと言うこと」、「受け止めてあげること」
― これを読んでいるみなさんのお子さんから未来の藤井聡太が生まれるかも? 最後に、これから始める人へエールをお願いします。
高橋:ママやパパが楽しんでいることは、自然と子どもも楽しいと感じるようになります。紹介したゲームをぜひ一緒に楽しんであげてください。意外に「子どものほうが強い!」なんていうことがあるかも知れません。
そして、親が「負けました」と素直に言うことも大事。子どもに教えたいことが身につくかどうかは、親がそのことにどう向き合っているかで決まります。
大人になって挫折したときにすがる場所がなく、その上受け止める心のしなやかさがないと苦しいです。
悔しいときにも家に帰ればママに優しく受け止めてもらえる子どものうちが、負けの経験を積むいいチャンス。伝統文化に触れながら、勝負を通して生きる力も身につけられるのが将棋の魅力ですね。
―
漠然と教育によさそうなイメージを持っていた将棋ですが、子育ての真髄にもつながるなんて目からウロコでした。
ざわPと同じく子どもに触れてほしいと思っているみなさん、ぜひ簡単なゲームから楽しんでみてください!
次回 9月16日(土)の担当はしぶT。よろしくね!
この記事を書いたライター
ライター一覧- ざわPさん 総監督
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小6男子と年長男子のパパです。最近の趣味はぎゅってWebのアクセス数を眺めながらニヤニヤ晩酌すること。ゲームが大好物のインドア派ですが、ぎゅってWebのおでかけ情報を参考に見聞を広めたいと思います。