障害のある人は勉強が苦手な人が多い?

大人になっても勉強や学習に苦手意識を持っている障害者は多いです。私は就労移行支援事業所での勤務経験があり、大人の発達障害者や精神障害者の訓練をやっていました。

当時は講義形式の訓練も担当しており、学校のような雰囲気で訓練を実施していました。その中には、「授業」「教科書」など、学校を連想されるワードを聞いただけで気分不良を起こしてしまう人もいました。

また、「数字を計算する」というだけで苦手意識からパニックを起こしてしまい、小学校低学年レベルの計算もできなくなってしまう50代の大人もいました。 ですが、障害者だから勉強ができない・勉強が苦手というわけではありません。

障害者も勉強や学習に取り組んで資格を取得しています。勉強をきちんとすれば、知識や学力は習得できます。発達障害で東大に進学する人って多いんですよ!

では、なぜ障害者は勉強や学習に苦手意識を強く持っているのか?それは、勉強ができなかったことで引き起こされた学校環境や人間関係のトラウマが原因であることがほとんどです。例えば、先ほど挙げた小学校低学年の計算ができずパニックを起こしてしまう障害者の場合。

どうやら小学生の頃、クラスのみんなができる計算ができず、クラス全員の前で先生に笑われた経験があったそうです。それ以来、数字を見ると当時の経験が思い出されパニックとなってしまい、50代の大人になっても足し算やパーセンテージの計算もできなくなってしまうそうです。

他にも、学生時代にいじめられた経験を大人になっても当時と同じ辛さで覚えている障害者の方もとても多くいらっしゃいます。

さらに、小学生の頃に担任の先生に給食費を盗んだと疑われ、クラス全員の前で「このクラスに泥棒がいる」と言われてから30年間ひきこもりになってしまう人もいます。

このように、子どもの頃や学校での辛い経験は、大人になっても根強い影響を与えているケースが多いです。その結果、発達障害の二次障害として、鬱や強迫性障害、妄想性パーソナリティ障害などの精神障害を抱えるケースも非常に多く見られます。

子どもは精神障害とは無縁と思われている人もいますが、小学生でも精神障害になるケースはもちろんあります。このように、勉強や学校を通し、子どもの頃の辛い経験を彷彿とさせてしまうことで、勉強にもマイナスな感情を抱きやすいのかもしれません。

意欲的に学習に取り組むためには?

では、どうしたら勉強や学習に取り組めるようになるのでしょうか?勉強への苦手意識を克服している障害者は、もちろん辛い経験もあったかと思いますが、勉強が楽しかったという経験で記憶を上塗りできている人でした。

勉強は自分に必要だと感じたり、勉強の楽しさを感じられれば、学習に対し意欲的になり成績だって良くなります。勉強へのマイナスな記憶を払拭できれば、ものすごく勉強が得意になるも大勢います。そのために、本人の特性に合わせた学習環境を整え、楽しく勉強ができるよう促すことが、障害者への学習の大きなサポートとなります。

そしてもう一つ、障害者が勉強を苦手になってしまう大きな原因の一つとして、障害者本人に対し「勉強にやる気がない」「怠けている」と周囲の人間がレッテルを貼ってしまうことが挙げられます。

本人は決して怠けているわけではなく、自分でできる限りの努力をしているため、このような周囲からのレッテルで深く傷付き、学習への拒否反応が出てしまうかもしれません。

つまり、障害者への学習サポート方法として
・本人が楽しんで勉強に取り組めるようなサービスを駆使し、学習方法を工夫する
・保護者や支援者などが障害や支援方法などの知識を理解しておく
という条件が必要不可欠となります。

ADHD(注意欠如多動性障害)への学習方法とは?

この診断がついている人に見られる特性として、
・授業中にじっと机に座れない・貧乏ゆすりなど多動性
・忘れ物の多さやケアレスミスなど注意欠如
などが多く見られます。

さらに多く見られる特性として、集中力の極度性があります。興味のあることには寝食を忘れてしまうほど集中して取り組めますが、それ以外のことになると無意識で眠気に襲われるケースが見られます。

過度に集中したことで脳が疲弊し、起きようと努力していても気付いたら寝落ちしてしまうことも多いです。周囲からは「興味がない」「やる気がない」「話を聞いていない」などの印象を抱かれやすく、厳しく叱責をされ勉強から距離を置いてしまう人が多いです。

これらから、ADHDへの適した学習方法は、オンとオフの切り替えを作ることです。ADHDの場合、過度に集中(過集中)で集中力をセーブさせることが難しく、長時間脳を酷使してしまうために突然居眠りをしてしまいます。

ですので、例えば30分勉強したら5分休憩(仮眠)を取るなど、集中する時間を区切ることが効果的と考えられます。

中には休憩時間になっていることも気付かず作業を続けたり、「もう少しだけやりたい!」と作業を続行させようとする人もいます。しかし、キリが悪くても時間になったら必ず作業をストップさせて休憩しましょう。

タイマーなどを活用されると良いと思います。周囲に迷惑がかからないよう音が静かなものもあるので探してみてください。

ナルコレプシー・睡眠障害への学習方法とは?

ナルコレプシーなど睡眠障害は、睡眠時間は十分に取れているにも関わらず無意識で何らかの刺激にストレスを感じて疲弊し、いつの間にか眠ってしまうという症状です。睡眠障害は本人の意志に関係なく、症状として常に寝てしまうことがあり治療が必要なものです。

授業や講義中、勉強中、中には仕事中でも居眠りしてしまうケースが多く見られます。こちらも気付いたら寝落ちしている、今まで眠気を感じていなかったのに突然激しい眠気が来るなどのケースが見られます。突然の眠気が来てしまう大きな原因として考えられるのが、無自覚のストレスです。

例えば、生活習慣。就寝時間は早くても、食事から就寝までの時間が短かったり、睡眠時間の前にしっかり入浴時間が確保されていないなどが挙げられます。

リラックスできずに就寝してしまうと、睡眠が浅かったりなど睡眠の質を下げる可能性が大きく、それらのストレスで昼間に眠気に襲われているかもしれません。

次に、外部からの刺激を受けている場合。例えば、通学通勤の時に人の多い所を通り疲れてしまったり、騒がしい環境に身を置いて聴覚にストレス負荷をかけているなど聴覚過敏。

また、学校や職場の照明やライトが眩しい、昨夜就寝前にスマホを長時間見てしまったなど視覚的なストレス負荷をかけているなど視覚過敏。前日に家族や友人から言われた何気無い一言に感情が揺さぶられて心理的ストレスを感じている場合もあります。さらに、天候や気圧などによって引き起こされる天気痛などの体調不良もあります。

そして、これらのストレスに本人の自覚がないという可能性も高いです。この障害の難しいところは、本人がどうして眠ってしまうのかわからないというケースが多いのです。

発達障害等の障害に関する知識がなければ、周囲からすると「怠けている」という印象を抱いてしまいます。本人も居眠りを防ぐために努力している中で、周囲からのレッテルは、本人を深く傷つける原因となります。

これらから、ナルコレプシーや睡眠障害への学習方法として、無自覚のストレスを発見するところから始めましょう。

まずは考えられる外部刺激を一覧にしたチェックリストを作成し、毎日記録できるようにします。
例えば
・昨夜は就寝前にスマホを見たか?
・朝に睡眠が浅いと感じたか?
・朝に日光を浴びたか?
・低気圧による頭痛はあるか?
・生理中か?
・通学通勤時間の騒音で疲れを感じたか?
・光が眩しさによる疲れを感じたか?
・昨日何か嫌なことや不安を感じたことがあるか?
などなど、自分に当てはまりそうなストレスをすべて挙げ、イエスかノーで回答できるようにします。

それを毎日朝にチェックし、自分がどんなことにストレスを感じているのか可視化します。2週間〜1カ月くらいチェックリストをつけていると、傾向が見えてきます。そして、このチェックリストによる傾向を把握するためには、安定した生活リズムが必要不可欠です。

完璧にやる必要はないですが、
・食事の時間
・入浴時間
・就寝時間
・起床時間
は毎日同じような時間にできるよう定めておくといいです。就寝時間は、実際に入眠ができなくても決められた時間に布団に入ればOKです。

学習障害・ディスレクシアへの学習方法とは?

学習障害とは、文字の読み書きや計算などの能力に困難が見られる障害です。
例えば、
・教科書や本の活字を読むことが困難
・漢字が部分的にバラバラに見え、自分の名前でも書くことが困難
・難しい論文は書けるが、算数は足し算など簡単な計算でも困難
などが見られます。

これは「学習」とついているため勉強ができないと思われがちですが、そうではありません。むしろ学習障害であってもIQは他の人と変わらない、あるいは他の人よりIQが高いこともあります。

テストなど設問の答えを導き出すことはできるものの、その設問を読み取ったり解答を筆記する際に困難が生じます。学習における場面で困難が生じる障害なので、対人関係やコミュニケーションスキルなどその他のことは健常の方と同じレベルで行うことができます。つまり、勉強能力の障害ではないのです。

その学習障害の一つとなるのが、ディスレクシアです。これは文字の読み書きするのが困難な発達障害となります。学齢期の年齢になっても文字を読むのに時間がかかったり、文字を上手に書けないなどの特性が見られます。そして、学習障害やディスレクシアへの学習方法は、耳から情報を入れるのが良いかと思います。

実際に声に出して音で言葉を覚えていくと効果的です。ディスレクシアはトレーニングをすれば文字が読めるようになる可能性も十分あります。

テストで設問に答える形式の学習では、是非タブレット学習を取り入れてみてください。活字で書いてある設問を自分で読むのではなく、音声で設問を読んでくれる機能があります。耳からの情報であれば、設問を理解する能力はあるのでテストを解いていくことは十分可能です。

解答する際も、口頭で解答したものをディスプレイ表示してくれる機能などもあります。授業や講義などのノートは、許可を得た上でボイスレコーダーで録音するのも良いかと思います。計算なども、音声で数式を聞き取れば理解しやすいかと思います。

ASD(自閉症スペクトラム障害)への学習方法とは?

ASD(自閉症スペクトラム)ですと感情表現が難しい場合があります。本人は真剣に考えて話を聞いているのですが、表情が無気力なため、周囲から「やる気がない」「不満がある」と受け取られやすいのです。

また、規則性によって気持ちを落ち着かせるケースも多くあり、毎日同じ時間を正確に守らないと不安に襲われたり、どんな些細なルール違反も許せず激しく注意してしまったり、衝動的に間違いを正そうとする特性も見られます。加えて、人によっては周囲へ意識を向けることが困難という特性も見られます。

例えば、授業や講義の時間が1分でも過ぎると先生が話している途中でも「時間過ぎてますよ!」と注意してしまうことや、わからない箇所があると相手が他の人と会話中であっても待つことができず質問してしまうことがあります。そのため、周囲から「空気が読めない」という印象を与えてしまいます。

さらにテストなどでは、一つしかない答えを導き出したり選択肢が複数ある中で答えを選ぶことはできても、作文など1から自分で作る作業は困難な特性を持っている人もいます。そんな場合は、自分の感想や意見・考察を述べることが難しいため、国語や英語が苦手だという障害者もいます。

そこで、ASD(自閉症スペクトラム障害)への学習方法は、ルールを決めておくことが良いかと思います。ASDは、自分の決めたルーティンや手順がちょっとでも変わるとパニックとなる人も多いです。ですので、自分のペースを守れる方法に工夫できれば安心して学習に取り組めるかと思います。

例えば、こんな感じで本人とルールを決めてみましょう。
・勉強時間は〇時から〇分、休憩は〇時に〇分
・〇時までは、教科書〇ページから〇ページまでやる
・〇時までに、〇つの問題を終わらせる
・わからない箇所は印を付けておき、〇分後にまとめて質問する
などなど。

この障害の特性の一つとして、「適当に」「ざっくり」「だいたい」などの曖昧な表現の理解が困難であることも挙げられます。そのため、ルールを決めるときは、時間や作業範囲などを具体的に明確に定めると良いかと思います。

「ちょっと待ってて!」もASD傾向の人にとっては理解に苦しむケースが多いですので、少し待ってて欲しい時には「あと5分待っててね!」など明確な時間を伝えられるようにしましょう。そして、作文を作る時には、5W3H(when,where,who,what,why,how,how many,how much)から文章を作れるフォーマットなどを用意するのがオススメです。

まとめ

この記事では、発達障害者の学習方法&サポート方法をお伝えしました。

以下にまとめます。

・勉強が苦手な障害者のほとんどは、勉強自体が嫌いなのではなく、勉強や学校での辛い経験やトラウマが原因で勉強と距離を置いてしまう

・障害者が意欲的に勉強に取り組むためには、本人の特性に合わせた学習方法の工夫と周囲の人が専門知識を理解し、勉強の必要性や楽しさを感じることが必要

・ADHD(注意欠如多動性障害)への学習方法は、タイマーなどで集中する時間を区切り、オンオフの切り替えをすることが重要

・ナルコレプシー・睡眠障害への学習方法は、本人が自覚していないストレスを発見し、生活リズムを安定させて日中活動時間を増やすことが重要

・学習障害・ディスレクシアへの学習方法は、活字を声や音に出して耳から情報を入れて覚えるようにすることが重要

・ASD(自閉症スペクトラム障害)への学習方法は、時間や作業をより具体的に明確化したルールを決め、自分のペースで勉強できるようにすることが重要

障害者が自身の力を十分に発揮できる手助けになりたいと思い、この記事を書きました。ぜひ参考にしていただき、勉強を楽しんでいただけることを祈っております。

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ぶうちゃんさん うつのない職場作り!社会福祉士ママ

大学で社会福祉を学び、その後は金融営業、弁護士秘書、不動産事務、人事などを経て就労移行支援で発達障害と精神障害をお持ちの方の就労支援に従事。金融営業では全国新規口座開設最高2位、就労移行支援の営業では3カ月で収益を倍増させ赤字経営を黒字に転換。現在は個人で福祉事業所、学校、医療機関、中小企業向けに、うつを予防する雇用環境作りの支援と楽しく収益化をする支援を行なっている。

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