コロナ禍の収束でリモートワーク推進の最大要因が解消され、オフィス回帰や出社義務化が進んでいます。

仕事の大きな時短術であるリモートワークはできなくなってしまうのか?短期のトレンドに惑わされないよう、現状の裏側を考えていきます。

アメリカで出社義務化が進んでいる? オフィス回帰が世界のトレンド?

アメリカの大手IT企業(グーグルやアマゾンなど)で最低出社率を義務付ける動きが相次いで発表されました。

EVメーカーのテスラでは原則出社、さもなくば解雇、という強硬な姿勢が取られています。

更にはリモートワーク普及の立役者と言われる、リモート会議ツール提供会社のZoomでも、週に2日は出社するように要請が出され、大きな話題になりました。

リモートワークによる先進的な働き方を推し進めてきた巨大IT企業が次々に出社を義務付けるようになったことから、アメリカではオフィス回帰が進んでいるという印象を受けやすくなっています。

これに対して早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、実態として以下を指摘しています。
・日米欧を比較すると、現在もリモートワークの割合が最も高いのはアメリカ
・日本やヨーロッパの方が、仕事は対面で行うものという伝統的な考え方が強い。アメリカは個人主義

メディアによる報道などで存在感の大きい企業の動きが目立っていますが、アメリカ全体ではなく一部の動きであることに注意する必要がありそうです。

アメリカ大手IT企業の出社義務化が進むのは業務効率だけでなく、景気が良くないから

アメリカは雇用の流動性が(日本に比べて)高い国です。

労働条件が悪いと思われれば、人材は他社に流出していきます。

出社義務化は働き方の柔軟性を制限する条件のため、金銭的な待遇が良くても、優秀な人材の中でプライベートを重視する人からは敬遠されることになります。

そのようなリスクを取ってまで、大手IT企業が出社を義務化する理由は何なのか。

それに対して前述の入山教授は、以下のようにコメントしています。
・大手IT企業の中心はITエンジニアで集中力が必要な仕事、自宅での作業には向かない
・優秀な人材がオフィスに集まって仕事をすることでピア効果が生まれ、個人の生産性が高まる
・エンジニアだけを出社させると不公平感が出るので、全員出社義務化になりやすい

リモートワークの普及によって、企業側と社員側の新たなトレードオフができています。

そのような場合に天秤がどちらに傾くかというのは、その時々の力関係によって決まってきます。

力関係の大きな要因は景気で、一般的に景気が良いと社員側が強く、悪いと企業側が強くなります。

現在のアメリカは株価が高いとはいえ、IT業界はコロナ特需が終わって相対的に不景気になっています。

それによって数千人規模のリストラが相次いで発表されました。

そのような背景からIT人材の求人は落ち込み、転職しにくい状況になっています。

企業側としては「社員が辞めにくい状況なら出社を義務化して業務効率を上げた方が良い」という経営判断がしやすくなっています。

アメリカの状況をまとめると以下となります。
・大手IT企業の出社義務化が目立つが一部の動きで、アメリカ全体のオフィス回帰というほどではない
・出社義務化の直接的な原因は、景気が良くないこと

日本の会社のオフィス回帰は続くのか

5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に引き下げられてから、日本でもオフィス回帰の傾向が出ています。

こういった状況に対して、入山教授は以下のように指摘しています。
・アメリカのような戦略的なオフィス回帰ではない。空気を読んだ決定という感じ
・日本の経営者は年配が多く、対面を重んじる傾向
・(アメリカと比べると)終身雇用のため、強制しても人材流出しにくい

日本の場合、会社の意思決定権は多くがモーレツ社員と言われる世代ということも関係がありそうです。

家庭を顧みずに働くのが当然という社会背景で生きてきた世代のため、自宅でリモートワークしようにも肩身が狭い。

かと言って出社してオフィスに自分しかいないのは寂しい。

だから全員出社、のような裏事情も中にはあるようです。

共働き子育て家庭で出社が義務化されたらどうすべきか

コロナ禍によるリモートワークは、子育て家庭の仕事との両立には大きなメリットでした。

共働き子育て家庭、特にコロナ発生後に子育てを始めた家庭にとっては、リモートワークを前提とした職住一体の生活に最適化されていると思われます。

そのような状況で出社が義務化されると、かなりピンチです。

個別事例ですが、私の会社でも最低出社率が設定されるようになり、非常に苦労しています。

対策は「辞めるか、変えるか、慣れるか」です。

そして業務スタイルは1. 完全出社、2. ハイブリッドワーク、3. フルリモートです。

決定方法は個人の状況によるので一概には言えませんが、それぞれの業務スタイルに対して、取るべき対策はおおむね次のようになります。
1. 完全出社 → 辞めるか、慣れる
こうなると別の会社を検討した方が良くなってきます。
職場が近かったり、パートナーに家事育児を頼れるなら許容範囲でしょうか。
完全出社の決定をする会社に対して、制度を変える試みは効果的ではないので、静かに去る方が無難と思われます。

2. ハイブリッドワーク → 慣れるか、変える
出社とリモートをある程度選べる状況であれば、今の会社を継続するのが無難です。
社員側が一丸となれば出社条件を緩和することもできるかもしれません。

3. フルリモート → 慣れる
職住同一が継続できるので問題なし

ここで重要になってくるのが、「企業側もまだ模索中」ということです。

コロナ禍収束やアメリカの動向に追随してオフィス回帰が進んでいますが、これは制度移行期の反動のように感じられます。

柔軟な働き方ができる方が人材は定着しやすいので、長い目で見れば「リモート多めのハイブリッドワーク」が主流になっていくのではないかと思います。

社会的な移行期により良い環境を求めて他社に移った後、転職先企業が制度変更して水の泡になるようなことがないか、辞める場合は注意が必要です。

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共働きおやじ研究所さん

4歳と2歳の姉妹を持つ30代中盤の父親です。妻は2022年4月に職場復帰。祖父母サポートなし共働き家庭を続けていくために、父親育児の手法を研究しています。
研究成果を公開し、親父の地位向上を目指しています。
仕事と家庭と自己実現の三方良しが人生の目標です。

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